内容説明
官吏が本当に政治を真面目にやろうと思えば、おたがいの交際などに費す時間も費用も出る筈がない。ところが…(「本文」より)。文武の功績多かった康煕帝61年の治世を引継いだ第五代雍正帝は、独得の奏摺政治をあみだし中国の独裁君主として徹底した独裁体制を確立してゆく。
目次
1 懊悩する老帝
2 犬になれ豚になれ
3 キリストへの誓い
4 天命の自覚
5 総督三羽烏
6 忠義は民族を超越する
7 独裁政治の限界
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
72
雍正帝時代の政治の実態を知ると、習近平の君臨する現代中国との共通点に驚く。どちらも寛仁大度の君主とされた康熙帝や鄧小平時代の影の部分であるボス政治の実態を見抜き、自分が頂点に立てば腐敗を許さない社会をつくろうと念願する。目指すところは共に真面目で有能な専制君主が巨大帝国を思い通りに統治する独裁体制であり、規律と勤勉と清潔に支配された官僚機構を望んだ。二人は完璧を求める理想主義者かもしれないが、やり方はスパイによる情報収集と反対者の粛清という恐怖政治なのも共通だ。300年前の歴史の繰り返しを今見ているのか。2021/02/24
みつ
36
再読。先に中国皇帝等の蕩尽ぶりを述べた新書『酒池肉林』を読み、対照的に贅沢のいとまもなくひたすら仕事に明け暮れた独裁君主を描いた本があったはずと思い出し、改めて手に取る。18世紀前半の清五代目の皇帝雍正帝は、45歳で即位してその治世は13年。六十年前後在位した父康熙帝と子乾隆帝に比べ知名度は劣るが、英明で名高いこの両君主すら雍正帝に比べれば「一段落ちて見える」(p201)というのが著者の見立て。1950年発行の岩波新書に私的な上奏文と帝の所感から成る『硃批諭旨』の紹介を加えた、熱のこもった格調高い名文。2024/07/26
MUNEKAZ
19
東洋史の泰斗による雍正帝の評伝。自らの地位を天命と思い、独裁政治に励む生真面目な姿が描かれている(日本史でいうなら徳川秀忠あたりが思い浮かぶ)。密偵を駆使して汚職を取り締まり、部下からの報告書には自ら朱筆を加える。こういう君主を理想と思う人もいるかしれないが、仕える臣下からしたらこんな上役いやだろうなというのが率直な感想。また補論での雍正帝の始めた奏摺政治が、乾隆帝以後の軍機処政治に繋がっていったという指摘も興味深い。2021/03/28
バルジ
13
異民族から出た「中国の独裁君主」雍正帝の伝記。著者の軽妙洒脱な語り口にぐっと引き込まれ楽しい読書になった。予期せぬ人選で父康煕帝より後継指名されま雍正帝は自身と天下を同一視し、ドス黒い孤独を抱えざるを得ない「独裁君主」として振る舞う。それは身内をも容赦なく弾圧し攘夷の気風を未だ抱く漢人士大夫達の筆禍事件を引き起こすが、本人は至って真面目である。地方の実情を地方官・密偵双方に報告させ自身で政治判断を行い、それは深夜にまで及ぶ。しかしこの真面目な独裁君主は雍正帝個人の代物であり制度ではない。ここに弱さがある。2023/01/22
BIN
12
康煕帝と乾隆帝の間で影の薄い雍正帝。北条早雲と氏康の間で影の薄い氏綱と同様に雍正帝も優秀だった。後継者を定めると後継者が驕りサボったり、派閥争いも起きることから開示しないようにして皆切磋琢磨させたり、地方官からの書状に対して赤ペン先生したり、独裁政治の基礎を築いたりと超有能。ただ雍正帝だからできることで他の皇帝ができそうにもないなとは確かに思う。意訳なのかもしれんがやりとりがコミカルで楽しい皇帝です。2019/09/01
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