感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
37
須磨から戻り、着々と栄華への道を歩む光君。今昔物語を彷彿とさせる独立したエピソードの「蓬生」を除けば、比較的順調に話が進む部分なのだが、橋本さんの手にかかると、人の心の襞を覗き込むような濃密な心理ドラマに変貌してしまう。特に、明石の方の性格付けは独特。控えめで理性的という従来の印象をひっくり返すような描き方には驚かされたが、生身の女の息遣いが立ち上ってくるようで、ずしりとした読み応えがある。ただ、光君目線での一人称で語られるので、相手が意のままにならないと、とたんに悪く言う傾向はあるように思う(苦笑)。2024/04/10
LUNE MER
16
末摘花の再登場〜秋好む中宮との攻防戦(光源氏の敗北)。有名な末摘花だが、「末摘花」の帖にて仲介役であり今回出番なしの大輔の命婦こそが魅力的なヒロインだったわけでちと寂しい。そして個人的に嫌いなシーンベスト3に確実に入るのは、明石の上との間に授かった娘を紫の上の養子にしようと画策するところ。特に窯変は光源氏の一人称で語られるので彼のエゴが明晰に言語化されており、嫌悪感が溢れる。ただ、当時の身分社会を前提としたときに娘の幸せのために取り得る唯一に近い手段だということについては関係者がみな納得しているのも事実。2021/09/08
かふ
13
各帖がページ数以上に長く感じるのは光源氏のモノローグがどこまでも問いのなかに彷徨っているからだろうか?「蓬生」は待つだけの末摘花が姫として宮廷に上がっていくファンタジーとして面白い。続く「関屋」「絵合」ではぐっと明るい調子になっていく。「関屋」では空蝉よりも小君の不服従に腹を立てる。「絵合」がこんなにも明るく感じられたのはそれまでの経緯があったからだろうか?「松風」は再び待つ女と母でありながら愛人である悲しみ。光源氏は母たちをどん底に落とす悪魔大王なのかと思うほど酷い。2024/04/04
maekoo
7
画期的な深掘昇華の各巻4~500Pの源氏物語現代語訳全14巻の五巻、蓬生・関屋・絵合・松風・薄雲を描く。 当然末摘花の心情や不器用だが生真面目な生き方や成長、周りの関わる人々の生き様は克明に描かれている。 更に絵合は権中納言の娘である弘徽殿の若い女御と光の推す斎宮女御に藤壺女院も巻き込んだ雅な政争は前段階も含め克明に膨らませている! 花散里の位置づけや明石の君と六条御息所との類似等原作ファンも他の現代語訳ファンも楽しめる! 明石の入道の大井の別邸の宿守の描き方も面白い! モテなくなっりつつある光も笑える!2025/09/25
みほ
4
嫉妬を恐れる普通さに笑う。しかし、御息所の哀れ。2013/12/09