内容説明
「我に追いつく敵機なし」を打電した高速機彩雲の活躍、7500キロを長駆し神珠湾を空襲した二式大艇、B‐24の泰緬鉄道「戦場にかける橋」空襲、名機・紫電改を擁する最後の海軍戦闘機隊―。空の戦いでもあった太平洋戦争において、多大な犠牲を出しながら最後まで敢闘した陸海軍航空隊の埋もれた歴史。
目次
「雲のじゅうたん」考―女流飛行家第一号の周辺
メジュロ環礁を偵察せよ―我に追いつく敵機なし
近接信管の勝利―ガ島沖の九九式艦爆
菊水特攻隊の最期―生還者の証言
真珠湾上空の二式大艇―K作戦の光と影
高田戦隊突入す―特攻のさきがけ
ヴィラモア大尉の栄光と悲運―マニラ上空のP‐26
陶飛曹長の終戦―芙蓉部隊と美濃部戦法
女川湾に死す―天草対グレー大尉
エンドー沖の空戦―老若男女うちつれて〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
59
結局シリーズ5冊完読してしまった。横浜海軍航空隊は地元のよく知った場所(今も富岡総合公園のR16側の入り口の少し下に隊の門柱が残る)にあるが、その部隊がガダルカナルの緒戦で所属する97大艇が全滅していたことを本書で初めて知った。また、クワイ川鉄橋空爆の話で、工兵たちがボルトを使わず木橋を修理していたという驚きの一話も。ちなみに映画「戦場にかける橋」のイギリス挺身隊はフィクションであることも知ることができた。しかし20歳そこそこの飛行士が続々と死んでいく話が多く、やはり胸が痛む。著者の冷徹な筆致が救いだ。2023/07/03
roatsu
13
彩雲のかなたへ、を読んで再読。本書にあ号作戦挺身偵察行の始末記が出ていて、長く記憶に残っていたことを確認。改めてその当事者が直接著わされた戦記が読めたことに感無量。田中さんと重巡利根の零式水偵でペアを組んだ歴戦搭乗員・陶三郎さんは昭和20年の沖縄戦で夜間空襲を反復し戦果を上げた美濃部正少佐率いる芙蓉部隊で夜戦乗りとして活躍し、その劇的なエピソードも本書に収録されている。複数集められた小さな、しかし重大な逸話を通して日米航空戦の大局的流れとその中で戦った将兵達の実相を後世に伝える良作と改めて思う。2016/02/05
roatsu
4
スポットライトを当てなければ歴史のひだに埋もれてしまうような知られざる、しかし当時の戦いの実態を知る上で重要なエピソード集。下巻は戦争後半が主体。歴史学者らしく情緒を交えることなく貴重な史実を伝えてくれています。2014/03/09