内容説明
サンフランシスコのアトリエにいる彫刻家を責め立てる、日本の妻からの長い国際電話。彫刻家の前には二人の白人女性が…。卓越したシチュエーションと透明なサスペンスで第七十七回芥川賞に輝いた表題作ほか二篇を含む、衝撃の愛と性の作品集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
284
1977年上半期芥川賞受賞作。私の一人称語りによって物語が進行してゆく。登場人物は、私の目前にいる2人の女―アニタとグロリア、そして電話を通じて声だけの妻、トキコ。この作品の実に特異な点は、私と2人の女との間で一切の会話が交わされることのない点だ。声の女トキコも一方的に語りかけるのみで、私との間に対話はない。その間に、彫刻家である私の視線だけが女たちの上を彷徨う。徹底した「眼」の小説なのだ。ロブ=グリエをはじめとしたヌーヴォー・ロマンの手法に近いものだと言えるだろう。これまでの日本文学にはなかったものだ。2013/06/22
遥かなる想い
212
第77回(1977年)芥川賞。 ひどく絵画的な作品である。 照明に照らし出される アニタの裸体と、 トキコの電話との対比が 印象的で 眼に浮かぶようである。とりとめもない 内容だが、視覚的記憶には残る、そんな作品だった。2017/10/10
ehirano1
82
浮気相手とコトの最中に奥様から海外電話で浮気について永延と追及されながらも、浮気相手やらその他の女性の性器をエーゲ海やら地中海やら大西洋やらにひたすらああでもないこうでもないと例えだし、あげく奥様は浮気相手の下着に顔を埋めて泣き出す・・・・・芥川賞文学の破壊力をまざまざと思い知らされる読書となりました(泣)。2024/01/18
hit4papa
48
タイトル作は、妻から浮気を疑われ国際電話越しに罵倒される主人公。罵られながらも目の前で繰り広げられる愛人の痴態に心奪われるというお話です。ここでいうエーゲ海が何かが分かると、当然想像するであろう美しい情景とそこで繰り広げられる物語、との落差を感じてしまうでしょう。著者の姿を思い起こし、私小説なのかと勘ぐってしまいました。他の収録作「ミルク色のオレンジ」、「テーブルの下の婚礼」ともに文学だから許容される(のか)、猥褻さがあります。全編を通して読むと、暗くて、ネガティブな情欲に辟易してしまいます。【芥川賞】2018/11/19
たぬ
36
☆2 挫折! 芥川賞受賞作の表題作含め全部で3編。だってさあ…日本に妻がいるのにイタリアで若い現地女二人と肉欲にまみれていたり35歳が10代の少女とやっていたり知的障害持ちであろう12歳の女の子とアレコレしていたり。早々に飽きてしまい読み続けるのは断念。セックスしてばかりで結局何が言いたいのかわからないという点では村上春樹と同じカテゴリーに入れてます。2023/05/07