出版社内容情報
正岡家の養子忠三郎ら、人生の達人といった風韻をもつひとびとの境涯を描く。「人間が生まれて死んでゆくという情趣」を織りなす名作。〈解説〉桶谷秀昭
内容説明
詩人、革命家など鮮烈な個性に慕われつつ、自らは無名の市井人として生きた正岡家の養子忠三郎ら、人生の達人といった風韻をもつひとびとの境涯を描く。「人間が生まれて死んでゆくという情趣」を織りなして、香気ただよう名作。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
89
正岡家の養子となった正岡忠三郎氏、その友人であり詩人でもある西澤隆二等を語る物語。正岡家に縁があるとはいえ、全く無名な市井の人物である忠三郎氏についてよくぞここまで調べて書いたものだと司馬氏の取材力には感嘆する。とはいえ、やはり人に記憶されるような事業や仕事を残した訳ではなく、ただ真面目に阪急電車、阪急百貨店で会社人として勤めあげただけの人物の一生を短編ならばともかく、上下二巻で読むのはいささか退屈であった事は否めない。★★2016/07/13
Die-Go
64
図書館本。正岡子規の養子・正岡忠三郎と、その親友・西沢隆二の交流をメインに据え、昭和の時代動きを描く。人の生き方の典型の1つが生き生きと描かれている。 『坂の上の雲』が読みたくなった。★★★☆☆2018/06/05
たつや
50
下巻は正岡子規がじょうきょうしてからのお話がメインであり、ちょっと退屈でした。読み飛ばしてなければ、漱石は出て来ませんでした。漱石が出てくれば、物語がしまったと思いましたが。当時、40冊の本を持って上京したとか、日記でもあったんでしょうか?よく調べたなと思います。ある意味ストーカー笑えた。2016/11/10
kawa
47
上下巻通じて主として登場する人物は、子規の母親・八重、妹・律、律の養子・忠三郎(本作では子規の養子的扱い)、忠三郎の親友で革命家のタカジ(詩人・ぬやま ひろし)、 特に下巻は後者二人がメイン。正直「坂の上~」のドラマティックな展開からすると地味なテーマで、上下560頁はしんどいところも無くはないが、子規の情趣を受け継ぐ市井の達人の忠三郎とタカジの生き方や友情、生死の消息に憑かれる。本作は「坂の上~」を踏まえつつ、そこにとらわれることなく読むべき作品のような気がする。間をおいて再読したい。2019/06/04
kawa
34
(再読)伊集院 静「ノボさん」で正岡子規に再注目。子規の養子の正岡忠三郎、彼の友人で革命家でもある、ぬまや・ひろし、そして彼を取り巻く縁者。どなたも失礼ながら史伝中の人物ではないながら「人生の達人」の趣きで魅力的。わが人生もこうありたい。お手本になる人々多数、無名の市井人にスポットを充てた司馬先生の慧眼に感服です。勇気でますね。 2020/03/30