内容説明
矢吹丈―60年代の終わりに登場し、若者にアンチヒーローとして鮮烈な印象を残したボクシング劇画「あしたのジョー」の主人公である。対戦者力石徹の死を悼んで行なわれた現実の葬儀は、もはやコミック界の伝説といってよい。この、時代を象徴する作品に、気鋭の若手心理学者、精神科医、弁護士、教育学者らが知の技法を縦横に適用、「真っ白に燃え尽きた」ボクサー・矢吹丈の人間的内面に迫る。
目次
「症例」矢吹丈―幼児期の「捨て子」という特異な体験が生んだ「依存欲求」と「攻撃衝動」
「サイコセラピスト」としてのジョー―日常から疎外された者同士のコミュニケーション
ボディ・ランゲージとしての「両手ぶらり戦法」―「両手ぶらり戦法」に作用している心的機制についての考察
“地下足袋を捨てた”丹下段平―丹下氏の自我状態変遷に関する交流分析的アプローチ
死闘の続く世界でみせたジョーの人間らしさ―帰属的理論から行動理解
丹下氏のコーチングは成功したのか―丹下段平氏の「構成主義的」教育方法の分析
見果てぬ両親を求めて―「対象喪失」体験の共有〔ほか〕