出版社内容情報
ソ連参戦の夜、満州新京の観象台官舎――。夫から引き裂かれた妻と愛児三人との言語に絶する脱出行がここから始まった。苦難と愛情の厳粛な記録。
内容説明
昭和二十年八月九日ソ連参戦の日の夜、満州新京の観象台官舎―、夫と引き裂かれた妻と愛児三人の、言語に絶する脱出行がここから始まる。これは敗戦下の悲運によく耐えて生きぬいた女性の、苦難と愛情の厳粛な記録である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さぁとなつ
37
三十代、四十代の時に繰り返し、繰り返し読みました。何故それほどこの作品に惹かれたのか。必死で子育てをしているときで、阪神・淡路大震災もあり、何かあった時どうやって子どもたちを守るかを頭の端でいつも考えている頃でした。戦争、引き揚げの経験とは比べることはできませんが、それでも知恵を使い、人を見極め、自分の力を信じながら子どもたちと日本へ、日本へと向かった母の強さが胸にズシンと来て、毎回泣かずにはいられませんでした。わたしにとって生涯離せない本です。 作者は新田次郎さんの奥さまだとかなりたってから知りました
三平
22
夫と離れ、3人の幼な子を抱えながら満州から朝鮮半島を経て日本へと帰還した藤原ていの手記。 人間の醜さ、優しさ、哀しさ、滑稽さ、そして逞しさをありのまま書き残している。自分の恥部になりそうなことも含めて。 引き揚げの悲惨さだけでなく、人間という生きものの全部を伝え、『青べか物語』(山本周五郎)を思い出させる。 よくぞここまで書いたことに驚く。並の人にはできない。2018/09/26
Suguru
20
戦後一年間の満洲から日本へ戻る体験談が書かれている。今の時代からは考えられないくらいの辛い体験。人間の残虐さも赤裸々に書かれている。無事じゃないけど帰ってこれて良かった。2020/04/25
とも
20
★半分読んだところでギブ。陰気臭い、辛気臭い、主人公は文句タラタラ明るくない。最後まで読めば分かるのかもしれないが、元々、新田次郎の嫁ということで読み始めたものの、現時点ではこれ以上読み進める気にもなれない。ということで、久々の断念。2014/02/21
ちょん
13
中学の時に読書感想文で読んで以来、図書館で見つけて懐かしく手に取った。30年以上前なのに、内容をよく覚えていた自分に感動。それだけ若かりし私には衝撃的だったのだろう。母になって改めて読んで、過酷な旅の辛さや子供を持つ母親の強さがビシビシと心に突き刺さった。自分はていさんのように子供とともに生き残れるだろうか。こわい。2012/04/16