内容説明
海外旅行のために受けた検査で発見されたガン。手術直後に伝えられた、夫の突然の死。極限の危機をのり越え、「第九」を唱うまで―。長年ホスピスの設立に力を尽し、平成五年の夏、病に逝った著者が、みずからの闘病体験のなかで〈いのち〉とは何かを問う、感動の記録。
目次
1 不意の知らせ
2 肝臓に影が…
3 夫の狼狽
4 長女の決断
5 羽田の別れ
6 札幌の病院で
7 病名を知らない人々
8 東京からの見舞い
9 手術前の検査
10 夫の葬儀
11 若き日の出会い
12 生死の引き綱
13 突然の麻痺
14 外泊の夜と朝
15 大地に癒されて
16 「第九」を唱う
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュシュ
26
母に薦められて。私が読んだのは1993年の婦人公論掲載のものだが、加筆されてこの本になった。命についてどっぷりと感じることができた。著者の経験が入っているせいか、とても真実味があってよかった。大筋とは関係ない日常の何気ない表現、ものの見方も好みだった。『若い頃から思案に余ることが起ると、必ず台所の流しの前に立ち、水を流し放しにして新鮮なトマトや胡瓜を洗ったものだ。冷たい水に触れ、生き生きした野菜に触れているうちに、気持ちが次第に落ち着くのだった』茨木のり子さんの詩が引用されていたが、同じ年代の人だった。2018/05/28
ミナコ@灯れ松明の火
15
かなり前の本なので、がん告知についても、がんそのものの捉え方についてもかなり今とは違っている感じ。ただし妻のがんを妻本人から告げられた時の夫の反応は、もしかしたら今でもそんなものかなあと思ったり。筆者が病気や手術翌日の夫の突然死から再び立ちあがり生きるさまは、時代は違えどとても輝いていた。生きるとは、自らつかむこと。2010/09/24
ヒロリーナ
2
随所のたあいない所でも共感できた、家族それぞれの反応が興味深い、入院中 夫の死という悲惨な状況もさらに壮絶にするけど 娘夫婦の温かさがすばらしい、本当によかった2012/03/02