内容説明
十四世紀後半にイギリスで書かれた寓意的な夢物語詩の、散文体による邦訳。作者が夢の中で見た出来事を語る、という形式をとって、当時の教会の腐敗と堕落した不安定な社会を痛烈に批判し、魂の救済の手段や、真のキリスト教徒としての生活を探求する。詳細な訳註、解題と参考文献を付す。
目次
農夫ピアズの幻想
解題『農夫ピアズの幻想』について
感想・レビュー
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まふ
87
チョーサーの「カンタベリー物語」と並び称される作品であるとのことで今回初読した。著者は14世紀の百年戦争真っ最中の英国の下層キリスト教僧侶であり当時のキリスト教聖職者・修道士を糾弾し正道に戻すことがこの書の目的だったらしい。しかし「正義」「美」「貞淑」「恩寵」などの抽象的な観念を人間の姿に置き換えて発言させ(寓意)説明する。これが当時の叙述の一方法だとのことであるが、読みにくく最後まで慣れなかった。目的はキリスト教の正常化、だったとしてもこのような抽象概念を自在に操る明晰な論理的頭脳があったことに驚いた。2023/04/11
刳森伸一
3
キリスト教系の寓意譚。当時の教会や社会を批判しつつ、真のキリスト者としての生き方を諭す。現代文学にはない中世文学ならではの魅力があるが、説教臭く、読んでいて徐々に疲れてしまうことは否めない。どうでもいい話なのだけど、タイトルから農夫ピアズが視る幻想だとばかり思っていたが、実際には農夫ピアズは幻想の中の登場人物だったのには驚いた。2018/12/11
二階堂
1
出掛けに寄った図書館でふらっと借りた一冊。寓意に満ちており、時間を置いてもう一度読み返したい。2015/07/30
たけぞう
1
夢物語で、かつ概念を擬人化して語らせるという形式の不思議で複雑な中世イングランドのお話。社会批判、キリスト教的なより良い生のあり方の追求という感じの話が中心。ちなみにこの物語にはA,B,Cと3種のテクストがありますが、この訳本はその中でも短いAヴァージョンの翻訳(解題ではB・Cも含めた解説がなされている)。2014/06/29
ローリングエルボー
1
道徳劇の原型か。2014/04/17