内容説明
平和で幸福な社会とは何か?真の快楽とは何か?16世紀の大ヒューマニストが「ユートピア」という形で提起した人類の根本問題にたいする省察は、理想社会を求める全ての人々に、時代と民族をこえて、訴えつづける力をもつ。改版では原典訳にさらに推敲をくわえ、新たに索引を付した。
目次
ユートピアにかんする詩と書簡
第1巻 社会の最善政体について 並ならざる人間ラファエル・ヒュトロダエウスの話の第1巻
第2巻 社会の最善政体についてのラファエル・ヒュトロダエウスの話の第2巻
書簡(続)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あーさん☆GWは墓参りをハシゴしました。暑くてバテました。
64
1978年初版。1990年7版。訳してる方が沢田昭夫氏。文体は読みやすいが、ルビが少ない。字も小さくて読みにくい。2019/08/12
小木ハム
24
『衝撃!ユートピアは管理社会だった(デデドン)』しかしひとつの社会のあり方としてはいいんじゃないのとも思う。こういう暮らしがしたい人も中には居るだろう。自然のあるがままに平穏で家族的、生活物資は共有性、奢侈に馴染まず晴耕雨読。朝に3時間、午後に3時間労働。但しプライベートな時間は諦めなければならない。結婚したいなら素っ裸でお見合い。犯罪をおかしたら奴隷刑。自衛であっても戦争は悪なので、外国の悪人を金で雇って戦ってもらう。トマス・モア自身も『これぞ理想郷』という意味で書いた訳ではないみたい。2021/03/23
kitten
17
図書館本。ベーシックインカムの本を読んでいて、源流はトマスモアの「ユートピア」とあったので、読んでみた。みなが勤勉に働き、ただし、一日の労働時間は6時間で、余暇は勉学に励み、生産物をみんなで分けるのでそもそもお金はいらない。贅沢なんてしようとも思わなければ、それで社会は成り立つのではないか?犯罪者に厳罰を与えるよりも、犯罪者を生まない社会を作ることを目指すのは確かに、ベーシックインカムの思想に近い。しかしこの本、非常に難解。ラテン語の原典を忠実に和訳したものらしい。そりゃ読みにくいわ。2021/04/22
roughfractus02
16
トポスは場所と同時に論述形式の基本単位(テーマ)を意味する。後者では、古代弁論家はトポスの肯定を論じた後に否定を論じる手腕が試された。トポスに否定接頭辞を付した表題の本書は、古代弁論術の伝統を受け継ぐ大英帝国大法官が著した。無から有を逆照射する弁論術的な本書は、法の権威、大地主、カトリック信者である著者自身の政治状況と対極にある小島の共産的な管理社会を紙上に創造した。一方、その意識的な対称世界の中に奴隷制、植民地支配、女性に関する著者の身分の常識に由来する無意識も書き込まれ、この島に不可思議さを加える。2022/05/13
おとん707
14
有名だけどあまり読まれない本。以前岩波文庫で読んだが字が細いので中公文庫で再読。トマス・モアがユートピアから帰ってきた人から聞いたという体裁の物語。私有物はなく皆で共有。経済は奴隷制の上に成り立ち、仕事も住居の移動も国に統制されている。家長を中心とした家族。信仰は自由と言いつつも創造主たる唯一神を崇拝しないものは蔑まれる。聞き手のモアは時々疑問を挟みつつも概ね感銘を受けたことになっている。というのが私の理解。ユートピアはただの固有名詞で、理想郷と同義とするのは正しくないと思う。私はこの国には住みたくない。2021/04/24