内容説明
書画、篆刻をよくし、生涯にわたって美食を追い求めた魯山人。「食器は料理のきもの」と唱え、40代後半から本格的に陶器の制作をはじめ、多彩で個性に富む数々の名品を生み出した。みずからの作陶体験と鋭い鑑賞眼をもって、古今の陶芸家と名器を俎上にのせ、やきものの尽きせぬ魅力を縦横に語った“魯山人のうつわ論”。
目次
なぜ作陶を志したか
私の陶器製作について
窯を築いて知り得たこと
私の作陶体験は先人をかく観る
陶芸家を志す者のために
魂を刳る美
日本のやきもの
瀬戸・美濃瀬戸発掘雑感
古九谷観
古唐津
備前焼
瀬戸黒の話
織部という陶器
志野焼の価値
乾山の陶器
芸美革新
陶器鑑賞について
料理と器物
古器観道楽〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
R
21
魯山人が語ったり、書いたりしたものを集めたものでした。読むだけで、その人となりが伝わるような、辛辣、あるいは毒舌、ただの悪口ともいえるような言葉づかいで、陶磁器に関する、その作家に関する批評を立ち上げていて非常に読み応えがあった。良し悪しとは別に、一本筋、魯山人の信念が貫かれているので、なるほどと思う部分もあるが、側にいたら嫌な人だったろうと想像に難くない。仁清を一番に褒めていて、乾山を下に見るという根拠も面白かったが、曖昧になりがちな美へ強い確信を持っていた様に尊敬を覚える。2019/05/20
ロビン
18
「備前焼」「志野焼の価値」「古器観道楽」など具体的な陶器についての解説から、「魂を刳る美」「陶芸家を志す者のために」など魯山人一流の陶芸論まで収録した一冊。「古典を師友とせよ」「自然は芸術の極致であり、美の最高である」「作陶といっても人間の反映なのだから、人格を作らなければならない」「芸術はすべて心の仕事である」など、美学や信念を聞いていると凄く立派で純粋な人と感じるが、一般の道徳から逸れた生き様は本当にバイロンみたいな人だと思う。自分は天才なんかでない、と言いながらピカソより自分が上だと言うから面白い。2019/10/14
六点
12
一読し、しみじみと「焼物の良さ」とは何だろうと、考え込んでしまった。ぬこ田は茶道はわからぬ。国宝の「飛青磁」を見ても「へぇ、きれいなもんですな」くらいの感しかわかぬ。樂家歴代の作を見ても「わぁ、黒いなあ」としか思わない朴念仁である。中之島でいくら古染付だの古瀬戸を見ても「うぅん」と首をひねっている。まだまだ良いものを見足りぬということなのであろう。魯山人の美に対する真剣さと執念には、圧倒されるばかりである。ただ、敵が多かったのも宜なるかなと、思う。この文章ではねえ。2020/04/20
yo27529
4
この本に収録されているエッセイの多くが戦前のものだということに注意が必要ではないか。それにしても安土・桃山あたりが最高であとは、まったく評価できぬ。まして現代作家はまったくだめ。みたいな言説ばかりで、魯山人の同時代人は彼をどう見ていたのかしら。きっと鼻持ちならない人物だったのではないかと想像してしまいます。この本の最後のほうに戦後の最晩年の自分の作品展の挨拶文が掲載されていますが、昭和20年代以前の勢いはなくなって、たんたんと自分の枯れた境地をかたる姿が逆に印象的。魯山人味道も読んでみたいけどね。2014/04/11
kitte
4
先ず青山二郎の言葉を引く。「人の顔さえ見れば美のいろはを論じ、芸術の道徳的価値を論じて鼻もちのならなかった魯山人は『天下に敵なし』と言って自惚れて死んだ。そして結局其処までの作品が残った。」(「唐九郎を”鑑定”する」より) 作陶については知らぬが、説教は須らく退屈である。語録に読むべきところを見出すことができなくはないが・・・。2010/02/21