内容説明
文化4年8月19日、江戸深川・富岡八幡宮の大祭に押し寄せた人々をのせて、永代橋が落ちた。一瞬にして2000人を越える老若男女の命を奪った悪夢のような惨事を通して、事件に巻き込まれた江戸庶民のさまざまな悲喜劇、葛藤や哀歓の種々相を、鋭い人間洞察に裏うちされた絶妙の筆致で描く連作8篇。
目次
風ぐるま
姉と妹
二人の母
蜂
椿の墓所
岸和田屋の娘
家訓
砂村心中
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
高橋 橘苑
14
文化4年、江戸深川・富岡八幡宮の祭礼で起きた、二千人の命を奪った永代橋崩落という史実から着想された連作八篇。歴史小説もあまり読まなくなったが、この人の作品は少しずつでも読んでゆきたい。杉本さんにとって江戸庶民の悲喜劇を描くのは、おそらく得意分野であり、市井人の哀歓がよく表現されている。個人の力で防ぎ得ない事件に巻き込まれた時にも、人の業の深さは滲み出てしまうということか。2015/04/27
しんこい
6
単に人が押し寄せたから崩れたのかと思っていましたが、そこに至る背景も色々あったのですね。それを連作にしたてて、2000人の死よりも、当事者にとっては娘の死だけが一大事なのはごもっとも。2016/02/29
たみき
6
今から200年ほど前に実際に起きた永代橋崩落という惨事。これに何らかの形で関係した江戸庶民の短編集。どのお話もなかなか興味深く、引き込まれた。もしかしたらこういうことがあったかもしれない…と思ったり。人間って面白い。永代橋にこんな歴史があったとは知らなかった。長い間ご苦労様です。2011/07/16
ymazda1
1
江戸時代の永代橋崩落には個人的に興味があったのと、あと、中公文庫ということで、それなりに史料的なバックボーンをもって書かれた作品なんかなって期待もあったのとで、古本屋をかなり巡って手にした本だっただけに、ふつうの時代小説だったのには、かなりのショックを受けた。。。
かつどん
1
災害は、天災人災含め多い昨今ではあるが、江戸時代の人災についての、克明なる人間模様。いつの世も、愛憎あり慾望ありエゴイズムあり。何度も読み返す連作。2018/09/30