出版社内容情報
文豪谷崎の流麗完璧な現代語訳による日本の誇る古典。日本画壇の巨匠14人による挿画入り絵巻。本巻は「螢」より「若菜」までを収録。〈解説〉池田彌三郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
28
「蛍」から「若菜下」までを収録。通説によれば「藤裏葉」までが第一部、「若菜上」からは第二部となる。なんといっても「若菜」上下が質・量ともに圧巻だ。柏木が女三の宮の姿を見てしまう場面のリアリティと、その後の柏木の心理描写は舌を巻くほど鮮やかで、凄みさえ漂う。二人の不義を知ってからの光君の鬱屈した想いが、トゲを忍ばせた会話からにじみ出てくるところなども、読み応え十分だ。一方、邦楽への深い造詣を伺わせる女楽の描写など典雅な王朝絵巻もふんだんに織り込まれ、長い巻を一気に読ませてくれる。内容が格段に深みを増した。2020/06/09
かごむし
27
平安時代の貴族社会に長い間住んでいるような錯覚がある。もはや、読書の域を越えて、光源氏の人生を、その周辺の人々の人生を、追体験している錯覚がある。読んでいるときは自分の感情があふれ出るほどの圧倒的な印象があったはずなのに、感動がうまく言葉にならない。源氏物語が言葉という記号を通じて、人間そのもののイメージを僕の中で直接動かしてしまっているからだろうか。1巻から、長い時間がかかったがここまで読むことができた。ここまで読んでよかった。この本に出会えてよかった。日本人に生まれてよかった。大げさではなくそう思う。2015/09/11
mm
25
源氏を読む!前回のチャレンジは三巻で挫折しております。そこで一年半のブランクの後再び三巻から始めることにいたしました。ちょっと斜め読みすぎるんじゃない?これで登録しちゃっていいの?って感じですが、ウオーミングアップです。権力的に大御所になると、ちょっと厭味だよね〜というところで、若菜の巻でございます。ここの進行は上手いものです。読み手の心理を手玉に取っていますよね?2017/05/21
こうすけ
17
谷崎源氏3巻。ますます面白くなっている、すごい。何といっても若菜の巻が最高。ここへ来ての女三宮の登場、紫の上の大病、その裏で進む略奪愛。若い頃の因果応報を感じつつも、静かにキレる源氏がこわい。あんたも大概だったじゃないか。まさかのあの人も再登場してうれしい。今まで出てきたキャラクターたちが、作者によってすごく大切にされているのが良い。猫が重要な役割で出てきて、1000年前から文学と猫の相性が良いことを知る(谷崎の猫の小説はここから発想したのかも)。これまで読んできた人たちへのご褒美のような巻。さて次は。2022/12/22
mm
17
光源氏の色好み、スーパーカリスマもてっぷりを愛でたいのなら1・2巻がいいだろう。3巻では登場人物が皆成長し、あるいは歳をとり、人生の機微をしみじみ感ずる巻だった。その中で女三ノ宮と柏木の若気の至りといわれてしまいそうな成り行きが浮き上がってドラマチック。この時代にこの物語って奇跡ですね〜。2015/11/21