内容説明
16世紀後半の日本は、非西欧圏で唯一、鉄砲の大量生産にもまさる鉄砲使用国となった。にも拘らず江戸時代を通じて日本人は鉄砲を捨てて刀剣の世界に舞い戻った。武器の歴史において起るべからざることが起ったのである。同時代の西欧では鉄砲の使用・拡大によって戦争に明け暮れていたことを考えると、この日本の〈奇跡〉が示唆するところは大きい。
目次
初めに 世に知られていない物語
第1話 日本に鉄砲が伝来した
第2話 鉄砲はどのように広まったか
第3話 鉄砲の全盛時代
第4話 日本はなぜ鉄砲を放棄したか
第5話 鉄砲から刀へ
第6話 近代兵器の再来
結び 日本史に学ぶ軍縮
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ビイーン
31
本書はものの視点がグローバルかつ斬新で凄く面白い。例えば16世紀の大阪商人がちり紙で鼻をかんでいた姿をイギリス人が見て驚愕する。当時のイギリスでは服の袖で鼻をかんでいた、とか。信長が勝利した長篠の合戦後、日本国内では鉄砲の大量生産が拡大し、鉄砲の絶対数では世界一になった。16世紀に世界の軍事大国だった日本が江戸時代に鉄砲を放棄した事を外国人の著者から指摘され、それが武器の世界史において信じられない事だったと気付かされる。ただし日本の奇跡が世界の核兵器に対してもなしうるかについては、大いに疑問を持つ。2019/07/15
niisun
13
この本は、私が生まれる前(1965年)に雑誌『The New Yorker』の紙面に掲載され、それを基にして1980年代に日本語版として刊行され、話題を博したものですが、今読んでも面白い作品でした♪ 作者の序文にあるように学術書ではありませんが、日本の知られざる姿を世界に発信するとともに、興味深い論点を示した秀作ですね。「日本はなぜ鉄砲を放棄したか」で示される5つの理由については、若干釈然としない部分もありますが、外からの視点や目線というのは常に必要ですね。2014/08/22
無重力蜜柑
11
原著は1979年発行。この頃は日本が経済成長を遂げて大国として台頭してきた時期で、逆にアメリカは経済的・社会的停滞の中にあった。ゆえにこの時代にはアメリカの学者による日本礼賛本が少なくない。この本もその一つだが、他の多くと違い、明治以降の日本の近代化と発展ではなくそれ以前、江戸時代におけるある種の「衰退」を評価する。タイトルにもある通りそれは軍事技術、中でも鉄砲の衰退である。戦国時代、日本は世界最大の鉄砲生産国であり軍事大国であった。しかし、江戸時代の泰平の中で兵器開発や軍事技術の多くは失われた。2024/07/22
鐵太郎
11
一読して、あちこち誤解があるように思えます。刀と鉄砲の区分けにについて、解釈がおかしいところもあります。武家の刀に対する偏愛とか、大名などの最高指揮官は鉄砲を使わなかったと言う例など、ちょっと違うよなと思うところもあります。しかし、こんな歴史観は、面白い。こんな考えもあり、か。理論武装の兵器庫にしまっておきたい考え方です。願わくば、だから日本人は偉大なのである、という自虐の裏返しの根拠のない自慢の種にならんことを。2009/06/02
ねむ
8
種子島に鉄砲が伝来して以来100年間、めざましい技術進歩を遂げたのちに鉄砲放棄を決めた日本を軍縮という視点から見つめ直した本。私は刀狩りは将軍さまの利己的政策としか思っていなかったのでそういう視点が新鮮だった。当時の日本人を褒めまくってくださるのが申し訳ないぐらい零落した現代日本に暮らす一人としては、せめて技術の「進歩」を倫理や文化という根拠に基づいて拒否することも決して不可能ではないという点だけでも肝に銘じたい。2020/06/21
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