内容説明
なぜか九州平戸島に漂着した韃靼公主を送って、謎多いその故国に赴く平戸武士桂庄助の前途になにが待ちかまえていたか。「17世紀の歴史が裂けてゆく時期」に出会った2人の愛の行方を軸に、東アジアの海陸に展開される雄大なロマン。第15回大仏次郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
105
面白かったです。司馬さん最後の長編小説。愛と歴史の物語に引き込まれました。平戸に漂流してきたアビアを祖国に連れて行くために翻弄する庄助。その様子は東アジアを舞台にした冒険譚という雰囲気を感じさせます。前途に何が待ち構えているのかドキドキしました。韃靼、蒙古、明の運命、鎖国の策を可決した日本。文化と文明と歴史の波の中に投げ込まれる庄助とアビアのロマンスはまさにドラマになっていくことでしょう。手描きの地図がいい味出してます。下巻も読みます。2017/07/21
カピバラKS
82
●上巻は司馬遼太郎版「天空の城ラピュタ」だ。少年少女の冒険譚であり、九州の片田舎から海洋を渡り中国の大草原に到るという海陸ロードノベルでもある。この間、少年少女には、多くの出会いがあるものの、いずれも初見では敵か味方か判然とせず、訝しみつつも仲を深めていき、裏切られたり、助けられたりして、旅は進んでいく。●ところで、誰しも人生で最も関心が高く悩ましい問題とは、良好な人間関係の構築ではあるまいか。本書はその秘訣が記されている。コミュ障必読の書と言えよう。2025/01/01
遥かなる想い
76
17世紀の平戸から始まる物語である。 明末期の東アジアを描いた作品はひどく少ないため、素直に嬉しい。 ヌルハチから ホンタイジへ…清王朝勃興期の 中国の風景が放牧的で新鮮に読める。 平戸武士桂庄助と 公主アビアの恋を絡ませながら、 東アジアの歴史をどう描くのか。 下巻の展開が楽しみ。2025/06/17
たつや
60
ふりがながなければ自分には読めないタイトル。なかなかあ読む気も起きなかったが、いざ読みはじめると、入江から始まるので、「菜の花の冲」のスピンオフ?とおもうと全然違う。島に漂流したお姫様を自国に送り届けるというまるで昔話かおとぎ話のような展開にドキドキが止まらない、昔の人は、よく異国の人とお互いに交流できたなと感心する。2016/11/20
kawa
57
女眞国(後の「清」)に、貴人の姫を送り届ける役目を命じられた平戸藩・桂庄助を通して17世紀の北東アジア(中国・朝鮮・マンジュ・日本)の動乱を描く。司馬先生は当時の朝鮮を「礼国の国であることを自負してきた。しかもその官学は物事を分析してやまない朱子学という口やかましい形而上学なのである。この論者の通弊として、実情を忘れて論じあい、相手との間に異があればそれを拡大として相手を罵倒するか、議論は結局は空中の閃光に似て、地上の問題の解決がなおざりになるふうがあった。」と評する。今その白昼夢を見ているような気も。2019/09/04
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