内容説明
だれが何の目的で戦争を起したのか。冷戦に一時期を画し、民族統一運動にも転機となったこの戦争の全体像を国際政治学の立場から解明した先駆的業績。未紹介史料を駆使し、トルーマン=マッカーサー抗争などアメリカの政策遂行の側面から叙述した、大胆な問題提起の書である。
目次
1 開戦前史(朝鮮の分割;南北両政府の成立;アメリカの基本政策と開戦)
2 「解放」と「統一」(アメリカの参戦;解放の日きたる?;統一の日きたる?;ウェイク島会談)
3 「まったく新しい戦争」(中国の参戦;中国参戦の背景;「12月の退却」;マッカーサーの解任)
4 休戦(板門店の隘路;李承晩の抵抗;休戦協定の成立;ジュネーブ会議)
5 朝鮮戦争の意義(世界政治の流れのなかで;戦後日本の歩みのうえで;朝鮮戦争関係年表)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
50
戦前、戦中の経緯がよくわかった。アメリカが軍事介入に消極的だったこと、トルーマンとマッカーサーの意見の相違による確執などはこの本で初めて知った。当時の一般の日本人にはそれらの情報は伏せられていたようだ。米中ソの緊張をあらわにしただけで、無意味な戦争ではなかっただろうか。日本の特需は知っていたが、今日まで続く状況を見ていると、とても喜べやしない。2016/04/03
skunk_c
46
『コールデスト・ウィンター』読破のついでに40年ぶりに中公新書版で読了。ベトナム戦争期の出版当時北朝鮮侵攻説が日本の学会から強烈な批判を受けていたというのが、まさに時代を感じさせる。戦闘の描写はほぼないが、55年前の情報の少ない時期に、これだけ冷静かつ的確に朝鮮戦争とそれを巡るアメリカ政治、国際政治を分析していたとは!マッカーサーに手厳しいのは当然として、ハルバースタムよりトルーマンに厳しい面もありバランスも良い。また休戦合意を巡る混乱も当時の情勢の中で分析されており、古さを感じさせない不朽の名著だ。2020/02/20
coolflat
20
南北朝鮮分断の固定化はアメリカの戦略の失敗が大きい。まず戦争前段階での失敗がある。アチソン演説で、西太平洋におけるアメリカの防衛線は、アリューシャン-日本-沖縄-フィリピンを結ぶ線であるとし、台湾と共に韓国をそれから除外した。そしてアメリカはこの防衛戦については防衛の直接的責任を負うが、その他の地域については特段の義務を持たないとアチソンは述べた。アチソン演説は、北朝鮮からの攻撃に対し、韓国軍の抵抗や国連の措置も効果がない場合には、韓国放棄もやむなしというアメリカ政府の基本的見解を公式に示唆したのである。2018/01/19
kitten
10
嫁の蔵書から。娘に朝鮮戦争の概要を教えてたので、復習してみた。第二次世界大戦後のゴタゴタの続きだったんだ。中共が大陸を制覇して、韓国は東アジアの大陸に残る最後の自由主義陣営。共産軍は一気に制圧するつもりだったし、アメリカも反攻作戦で一気に統一するつもりだった。まさか、その後70年以上も両国が存在し続けるとは、この当時誰も予想できなかったと思う。仲介に入ったのがインドってのもびっくり。もうそろそろ解決して欲しい、統一するメリットがないから難しい。2021/06/14
しろくまZ
9
1966年の著作。朝鮮戦争に関する名著らしく、図書館で借りて読了。トルーマンとマッカーサーとの確執、米国の戦争目的の変化、中国参戦の背景など、興味深い事項が簡潔に述べられている。2017/11/14