内容説明
誇り高い一頭のシベリア虎の物語。額に王、首すじに大の字の模様をもつ、生まれながらの森林の大王「王」。タラノキやブドウの生い茂るヤブの中で生まれ落ちてから、威厳と力と英知を備えた王者になるまでの一生を、克明に描く長篇。狩を覚えながらの日々の成長。アナグマ、イノシシ、クマ、アカシカ、そして人間との熾烈な戦い―。季節ごとに変化する森林の美しい描写とともに、野生動物の生態を活写する、動物文学の最高傑作。中公文庫オリジナル版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
57
ニコライ・バイコフは、ロシア帝政時代のキエフで生まれた。小さい頃から動物が好きで、軍人となってから、バイコフがコーカサス地方や中国東北地方の自然に関心を持っていることを知った昆虫愛好家の連隊のはからいで極東の国境警備隊の将校となった。当時中国の東北地方にはロシアの権利で東清鉄道の敷設工事が行われており、バイコフが所属していた軍隊はその鉄道を守るのが役目だった。バイコフは、軍の仕事をしながら、その地の動物や植物の研究をした。『偉大なる王』では、その当時の東北地方の自然破壊がリアルに描かれている。2022/10/16
syota
21
北満州の大森林に君臨する巨大なシベリア虎の物語。出産、子育て、狩りなど虎の生態が生き生きと描かれている。虎以外にも、年老いてボスの座を追われたイノシシや、連携プレーでリスを追い詰めるクロテン夫婦など興味深い話が満載。生態学的には疑問を感じる記述も散見されるが、北東アジアの「動物記」と呼ぶに相応しい内容だ。一方後半は、動物と人間の関係が主題に。ロシア人である作者は、森を切り開き野獣を駆逐しようとするロシア人たちを自然と共存する先住中国人と対比させながら描き、文明が自然を押しつぶすことに警鐘を鳴らしている。2019/06/28
クリママ
17
小学生の時の雑誌の付録。強く孤高なトラの王(ワン)に惹かれ、何度も読み返す。トラの姿が生き生きと描かれた、大好きな物語だった。その原作を見つけた。トラの描写は、素晴らしかった。でも、その後半、動物が暮らす満州に鉄道が通る。トラと人間の戦いの本だった。それは、子供向きの描写ではなかった。あの頃のあこがれのままでいたかったのか、それとも、人間の横暴を知るべきだったのか。2016/09/16
ちゅん
2
再読。自然を偉大と思う心は現代ではもう持てないのではないか。「凄い」というのとはまた違う。その響きはどこか他人事の感が否めない。偉大とは、それは知識ではなく、自身に身近で感じられ、それでいて雄々しく恐ろしいものでなくてはならないのだと思う。偉大とは近くて遠いものに対する想像力の権化だ・・・身近はちょっと違うかな? 王とトン・リの関係は互いの互いに対する畏敬の念であふれる。物語としては少し物足りない感はあるし、動物の心理描写があり過ぎる感はある。だが偉大なるものを堂々と偉大と言うこの物語は偉大だ。2020/04/28
けむりの猿c((•ω•))ɔ
1
25年くらい前に古本屋で購入。ロシアの作家バイコフによる動物文学。ー再読して改めて感想を書きますー