内容説明
東方の眠れる巨人・ロシアを根底から揺り起こし、西方の近代国家へと変貌させた大いなる男、大帝ピョートルの豪壮苛烈な死闘と放埓な恋の遍歴を、雄大なロシアの自然風土を背景に描く歴史巨篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
権現
9
これほどまでに意志貫徹の人生を送った人間がどれほどいるのだろうか。ロシアの支配者として君臨してから病に伏すその日まで、この人物のやることはまるで変わらない。文明の先端を進んでいたヨーロッパに憧れ、古きロシアを革新することに心血を注ぎ、下々の民に混ざって大酒を飲んだかと思えば自ら最前線の一兵卒として強国を打ち破る。支離滅裂でありながら根底に流れるロシア人らしさを失わないこの専制君主は、その生涯を通じて自らの信じる価値で世界を創り変えてしまう。歴史の中に突然現れたアノマリーのような男の強烈な人生が愉しい一冊。2016/12/10
トーマス
3
暴力的でわがままで思索的でなくひたすら人命を軽んじた皇帝ピョートル。同時にロシアを改革し広大な領土を得た英雄。粗野にして明晰、冷酷にしてユーモラス、神経質にして勇敢、無教養にして旺盛な知的好奇心、ツァーリにして職人、祖国を憂いつつ馬鹿騒ぎを愛し、旧弊を憎みつつ海と軍隊と酒と外国を終生好んだ。矛盾を矛盾としてあるがままにみる心を持たない限り、この人は評価できない。2013/09/18
みずたま
2
北欧の覇者であったスウェーデンで破り、サンクトペテルブルクを作った偉大な皇帝(ツァーリ)ピョートル大帝。しかし、その人柄は粗暴で周りを振り回し、自分のやりたいことを突き通すために周りを押さえつける。２メートル以上もある身長を持つ巨人であり、暴飲暴食。 そんな暴君であるほどのパワフルさがあってこそ、北の小国であったロシアが他の西洋に追い付くような国に短期間で改革することができたのであろう。 それにしても、彼の破天荒エピソードは壮絶すぎて…当時の人は大変だったろうなあと思った。2021/03/21
sodium hydride
1
途中、何度も表紙の絵を見返した。「あなたって人は・・・」◆軽々に感想を書くのが躊躇われるので、このくらいにしておく。2021/02/20
ゲオルギオ・ハーン
1
教科書ではロシア帝国近代化の一歩を踏んだ偉大なる皇帝とある。けれど、本書を読むとそれは彼の一面に過ぎないことが分かる。好奇心旺盛でバイタリティー溢れ、せっかちという性格が彼の根本にある。ある時はフランスやオーストリアのような強力な中央集権国家を実現するために制度作りや首都移転、学校作り、西欧への留学も奨励するという名君。ある時は乱痴気騒ぎと突発的に他人に暴力を振るい、正妻を修道院に閉じ込め、愛人を皇妃にする暴君。ある時は変装や偽名を使い、皇帝の位を投げ出して活動する怪人。それがピョートル大帝である。2019/11/27
