内容説明
様々なる観念を表裏一体とする厳しい二元論に生きた天才へ、親しくそして本質的な理解者が注ぐ時間を超えた優しい眼差し。
目次
三島由紀夫をめぐる断章
三島由紀夫覚書
三島由紀夫の手紙
琥珀の虫
三島由紀夫とデカダンス―個人的な思い出を中心に
三島由紀夫氏を悼む
絶対を垣間見んとして…
『天人五衰』書評
輪廻と転生のロマン―『春の雪』および『奔馬』について
『音楽』解説
セバスティアン・コンプレックスについて―三島戯曲の底にあるもの
サド侯爵夫人の真の顔―『サド侯爵夫人』序
『サド侯爵夫人』の思い出
女だけの女の芝居―『サド侯爵夫人』を見て
サドと三島文学
フランス版『サド侯爵夫人』について
惑星の運行のように―ルノー/バロー劇団『サド侯爵夫人』を見て
『美の襲撃』書評
サロメの時代
ユルスナール『三島あるいは空虚のヴィジョン』あとがき
対談 鏡花の魅力(三島由紀夫;渋沢龍彦)
対談 タルホの世界(三島由紀夫;渋沢龍彦)
対談 三島由紀夫 世紀末デカダンスの文学(出口裕弘;渋沢龍彦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
101
交友があった澁澤龍彦が書き綴った「三島由紀夫論」。生きていた頃の三島由紀夫を知らないので、本書を読むと何だか不思議な感じがします。彼の厳格無比な作品のイメージとは違って、茶目っ気がある人柄が素敵です。澁澤と三島の対談も興味深い。特に泉鏡花については面白かったので私も鏡花を読んでみたいです。密かに死へと突き進んで行く三島の姿を思うと何だか切ない。彼は己の美学のために殉死したのだろうけど、やはりその死には謎が残る(当然、私の勉強不足もあるけれど)。読書とは作者との対話だ。これからも三島文学を愛読していきたい。2016/07/27
スプーン
44
三島さんは、とても総括なんて出来ない人な訳だけれども、そこを友人であった澁澤さんが、自身の評論を通して、文人三島の概要を表そうとした本。「体温」を感じる文章が多く、やはり「しんみり」してしまいます。2022/06/03
白のヒメ
29
友人であったフランス文学者の澁澤氏による「三島論」。親しい友人ならではの三島氏の日常のエピソードが載っていて、三島氏が実際にどんな人物であったのか、光景の回顧をしている。真面目な性格ゆえに結構周りからからかわれるキャラクターであったとか、血みどろなものが好きだったとか、大きい声で快活に笑うとか、三島氏のリアルな人間像が迫ってくる。そして自分で翻訳したユルスナールの著書「三島、あるいは空虚のビジョン」に触れ、海外の文学者から見た三島像も考察されている。海外の文学者からの視点での三島文学にも非常に興味が湧く。2014/01/29
安南
25
亡くなった小説家の妻達が時に回想録などを出すけれど、ちょっとそれに近いものを感じた。よい意味で(笑)三島の人間性とか、著者との関わり合いなどは、まぁそれなりに。同年代の物書き同士、微妙なものを感じて苦笑いの箇所も。だいたい三島は亡くなっているのだから分が悪い。澁澤ファンはそのままに、わたしはちょっぴりナナメに読む。それよりも作品論と鏡花、足穂についての対談が興味深い。こういう話の盛り上がりはこの二人ならでは。最後の出口裕弘との対談は少々下世話な印象も否めないが、新鮮な発見もあり楽しめた。2013/07/20
澤水月
24
盟友で共犯そしてあの割腹から数時間で書かれた文章もあり三島理解に外せない本。三島「卵」というナンセンス短編妙に珍しく澁澤が酷評していた覚えあるがこの本?正確には立風書房900112再?読(刊行の83年=自分13歳=、出て割とすぐ読んだ可能性)。三島の没年月と自分の生年月が一緒で「24日早かったら生まれ変わりといえたのに」など思ったりしたが、まさか45で…。今年2015年知り、奇しくも自分も45になり、「折り返し」感強く少々感慨。三島没後45年生誕90年の憂国忌に改めメモ。しかし“渋”澤表記どうにかならんか2015/11/25