内容説明
谷崎潤一郎夫人が、その篋底に秘してきた文豪の愛の書簡と創作ノートを繙きながら、名作『細雪』の舞台裏と胸深く刻まれた忘れがたい出会いのころを、なつかしさを込めて濃やかに綴る思い出の記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コニコ@共楽
13
ようやく『細雪』を読了した余韻にと、モデルになった谷崎潤一郎の妻、松子が書いた追想を読んでみる。副題が「潤一郎と『細雪』の世界」とあったので、全編が『細雪』のことが書かれているかと思いきや、前半は潤一郎と一緒になるまでの苦しい時期を綴っていた。彼から松子への手紙が春琴を想う佐助のようでびっくりする。関西の香りがする『細雪』を書いた潤一郎も手紙では臆面もない愛の告白をしているが実際に言葉で発することは少なく照れが先に立った江戸っ子だったというのも意外だった。戦時中のエピソードも興味深かった。2025/06/19