感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shinano
35
裏表紙の一言「芥川はなつかしくてたまらない」を見て、うおっ、これは楽しい付箋張り読書になるぞ!と直感した。まさにその通りだった。宇野浩二と芥川が親交深かったのは知っていたが、ここまで気が合っていたとは思っていなかった。著者も作家であるから友芥川をどうしても職業的客観描写を施しがちだが、友人としての対等性がそれを主観的で平易な言葉にしているので、読み手に芥川の表情やしぐさが沸々と浮かぶ。正誤あるが思い出しながら書いているのが良い。「芥川は小説よりも人間が面白い」という宇野のこの言葉が絶妙と知る一冊。2011/07/14
毒兎真暗ミサ【副長】
25
優しい芥川に連れられて大阪に旅行した時の宇野氏の『日記』。芥川の日常がのほほんと語られて……いなかった。先生どうやら宇野氏の彼女に手を出したらしく、宇野氏はご立腹。こんな事書けないけどと言いながら書いた芥川小説の暴露本がこれ。まぁあれよあれよ出るわ出るわ。角度変え手を変え品を変えの恨み節。もし芥川が健在で。「あの時は悪かったね」と言ったなら。「あぁ、君みたいな男に靡くならさ。アレは大した女じゃなかったのさ」と返せばいいだけのお話。それが真の粋である。はて、恨み節は続くのか?下巻へ。2023/09/14
月
6
後半、佐藤春夫が纂輯した「澄江堂遺珠」(芥川未完の詩集)からの抜粋がある。以前これを読んだ時と、今回、宇野浩二の注釈(と言うのか)で読んだ時と比べると、何故か今回の方がすんなり入ってくる。もう一度、改めて澄江堂遺珠を読み直してみたいと思う。以下、宇野の言葉より引用、澄江堂遺珠は、詩人佐藤春夫が、既に作者(芥川)がこれを為し得なかったとさえ見るべき未定稿の詩を、幾度も幾度も通読し玩味し、苦心惨憺して、纂輯したものである。 2019/09/26