感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひばりん
12
1939年の本である。クラシック業界は一周まわって、この時代の再評価に向かうようになってきた。バロック奏法ブームがあって、これが煮詰まって、さぁ19世紀を再考しようとなったときに、19世紀の場合はバロック奏法と異なり「レコード」から推察されるものが大きく、実証性が高い。だから面白い。あらえびすの批評も、19世紀的なものと、”新”時代的なものの間で引き裂かれながら展開される。にしても、ルビンシュテインへの厳しさに驚いた。思考より指が先に動いている、と。そこがルの面白さと思っていたが、まぁたしかにそれはそう。2021/03/16
しゅん
11
日本西洋音楽批評の黎明期の人だろう。レコード集めまくった人でもある。印象批評の連続が空虚な羅列に思えてつらくて途中で読むのをやめたけど、文の簡潔さとブロックごとのリズムには気持ち良いとこもある。「日支事変が(中略)悪音楽を一掃して、日本には再び、良き音楽、美しき音楽が、朗々として響きわたっている」の一節、純粋芸術主義と愛国主義がかけ合わさって笑えてくるほどの排外思想。1939年初版。悪音楽はジャズのことを指していると思われる。2020/08/03
おとん707
7
「銭形平次捕り物控」の作者野村胡堂が筆名あらえびすで著したクラシック音楽のレコード収集指南書。1939年刊行なので当然SPレコードで録音年代も今から百年くらい前が中心だが当時でも著者が膨大なコレクションを持っていて慈しむように音楽を聴いていたことがわかる。こんな昔のレコードだが今ではこの本で紹介されている演奏そのものの多くをYouTubeで聴くことができる。そして著者が熱っぽく語るその演奏の良さに深く納得してしまう。録音は悪いが良い演奏は悪録音を凌駕する。チェロのカザルスなど改めて良さに気づかされた。2020/11/25
ラー
1
今から80年くらい前に書かれたクラシックレコードについての本。音楽と向き合う真摯な姿勢に打たれるものがあった。YouTubeやストリーミングサービスで何でも聴ける今とは違って昔の人は貪欲だったのだなと感じた。2016/08/18
ataka
1
再読。SP 盤時代の名盤案内の古典的名著。上巻はヴァイオリニストとピアニスト。僕は本書を読んでフランクのヴァイオリン・ソナタを好きになった。あらえびすはペンネームで、別のペンネームで銭形平次の作者として有名。文章に過剰な褒め言葉は少なく、キリッと引き締まっている。2012/08/21