感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ted
8
'79年11月刊。○完結編。世田谷の三等郵便局の経営を任され平穏な家庭生活を送っていたのも束の間、ロシア革命勃発により再び大陸へと諜報任務に旅立つ。諜報のみならず慣れない謀略にも関与したため同胞に犠牲者が出てしまう。赤化阻止とチェコ兵救出を名目に連合国は出兵するが、中でも日本軍の火事泥的な実態に、友好的な支援だとばかり思っていた白系ロシア人を大いに失望させ怒りを買う破目に。中央の政策のいい加減さが、現場で誠実に事に当っている石光の苦悩をどれだけ深いものにしていたか推して知るべし。誠に生きた誇るべき明治人。2016/06/12
おおにし
5
石光真清の手記最終巻。ロシア革命直後のシベリアはボリシェビキと反革命派のコザック兵がシベリア支配をめぐって内紛状態にあった。そこへ諜報活動のために派遣された石光大尉は紛争解決のために、命がけでどちらの陣営にも訪れ、方策を会談したり日本軍出兵の要請をしたりと奔走したが、革命の混乱は拡大するばかりで在住邦人にも犠牲者が出てしまった。挙句の果てに軍司令官からお前は誰のために働いているのかと言われる始末。歴史の転換期に一個人として何ができるか、その限界を示してくれた貴重な手記である。2011/10/06
ykoro
4
波乱万丈の満州の人生は、感慨深い。思いもしない方向に運命が動いていく中で、様々な人との関わりが印象的。明治から大正の時代の動きが分かり易い。 2014/05/04
Yuki Snowy
4
愉快な読み物であるとは,とても言えない。ただ,このおそろしく冷酷な現実も運命も,全て現実に起こったことなのだと思いながら読み進んだ。この人たちによって築かれ守られたのがこの国なのだと。2006/07/07
mun54
3
「城下の花」から続く石光真清の四部作。幼少期には西南戦争。軍人になってからは日清、日露戦争に従軍し、ロシア革命後のシベリアで諜報活動。実話とは思えないほどの経歴だが、激動の時代と日本軍部に翻弄され、波乱の人生をおくる。2015/10/30