中公文庫<br> 癩王のテラス

中公文庫
癩王のテラス

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  • サイズ 文庫判/ページ数 125p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122002395
  • NDC分類 912.6

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

39
カンボジアのジャヤ・ヴァルマン王が癩病に冒されていたという伝説に想を得た華麗で豪奢な戯曲。第一幕の、若く勇猛な美しい王を見舞う悲劇が明らかになる場面の儚さ美しさには陶然としてしまいます。病に若い肉体が崩れてゆくのを見つめるしかない王と、それに従って出来上がってゆく聖なる、永遠の寺院。それは月に照らされた限りのある人間の王国から太陽の下の永遠の王国への転換でもあって、醜を美に、穢を聖に、滅びゆくものを永遠のものにという物語全体を包む美学とその夢の実現を宣言する最後の叫びに、まだ酔っているような気持ちです。2017/07/20

安南

39
肉体は滅びても精神は永遠だ。というのが一般的な考え方だが、この戯曲では「青春こそ不滅、肉体こそ不死なのだ」と肉体が勝利を宣言する。それはつまり『太陽と鉄』で書いている「肉体が未来の衰退に向かって歩むとき、そのほうへはついて行かずに、肉体に比べればはるかに盲目で頑固な精神について行き、果てはそれにたぶらかされる人々と同じ道を、私は歩きたいとは思わない」ということだろうか。私には難解な戯曲だったが、老いた芸術家になることだけは断固拒否するという決意だけは理解することができた。いずれまた、再読したい。2014/11/25

すずちょ

4
精神と肉体、健康と病、美と醜、愛と嫉妬、すべてが対立するようで共存している…というようなことを考えさせられました。 絢爛豪華で、舞台(というより題材となったカンボジアの風景)がありありと浮かぶような作品です。 カンボジア旅行に先立ってこの作品を読みました。 この作品を知ってから訪れたアンコール・トムのバイヨンは、また格別な味わいでした。2016/12/19

調“本”薬局問悶堂

2
久しぶりの戯曲。一気に読んじゃった。 すご~く、面白い。芝居で見てみたいな。 自分でも、演じながら読んでみる。そんな通勤時間。 《2020年7月 登録》 【あらすじ】 死は月と銀、生は太陽と金。 古代カンボジヤの若き英雄王が、黒い死の淵からよみがえり、永遠不朽の肉体の化身となる。 三島由紀夫のユニークな美意識を舞台に展開した絢爛たるロマン。2012/02/07

nightowl

2
滅亡の影が忍び寄るカンボジア王朝。国王は寺の建立に全てを賭けようとする。病に蝕まれながら…/豊饒の海が終盤駆け足に感じたのに比べ、こちらは創作戯曲の掉尾を飾るに相応しい。あとがきで書くように"さまざまなサーヴィスも敢てしながら"(確かに王朝舞台なことはありシェイクスピア的な奸計が巡らされる展開がある)、自らの思想を上手く溶かし込んでいる。滅びの中の幸福、美しい肉体の追及等々。三島由紀夫はもういない、と死の実感を漸く持った一冊。借りたものは昭和63年5月5日の3版。何とか全集以外で読める形になってほしい。2018/10/29

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