感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
11
再読。体内で蠢くモヤモヤと周囲の景色の描写がどちらも気持ち悪さを伴う長さと密度で続いていく。テニスと失くしたTシャツ、不眠症と近所の火事、少女の遊びと誤って入った混浴風呂。何故この男はどうでもいいと思えるような出来事に縛り付けられているのか。そのこだわりに、書いている本人も戸惑っているかのよう。その文章から湧き上がる不思議な気怠さには以前読んだときよりも惹かれる。ただ、細部や構造が読み取れる分だけ、文章に含まれる女性の過度なモノ化に引っかかてしまう。古井の女性表象についてはもっと考えたい。2022/09/24
メルキド出版
10
「木曜日に」2019/01/07
hitotoseno
5
人は古井と同年代の作家をくくって「内向の世代」と呼んだという。名称自体は間違いではないだろうが、政治に背を向けた者として悪し様に評価するのは間違っている。自分が手に取れるミニマムな世界にだけ耽溺する、などといえば愚かにも聴こえるだろうが、この「自分」が定かならぬものだとしたら、耽溺によって起こることは存在することの不安であり、政治的な問題などはハシタメに過ぎない人間の根本的な問題へと行きあたるのである。そもそも古井にとっての「自分」もまた外部なのだ。ほんのちょっとしたきっかけで崩れてしまう自分。2012/08/06
たりらりらん
5
古井さんらしいふわふわした読後感が残る短編(中編か)集。表題作含め五作収録。「不眠の祭り」と「菫色の空に」が個人的に好きだった。古井さんが描く恋というか男女関係は、「妻隠」や「杳子」にしてもそうなんだけど、なんだかふんわりした感じで、でも離れられないという絶対性みたいなものをどこかに感じる。この「円陣を組む女たち」に含まれている作品からは、人がたくさん集まった時に輪郭がぼやけていくような集団というものが描かれているように感じた。この感じ、すごく好きなんだけど、なんだか不思議。2010/11/24
ピラックマ
2
話は違えどどれも似たような印象ではあるがラストの「菫色の空に」。たかだかシャツが無くなったというありふれた日常の出来事を狂気を孕んだオブセッションにまで持っていく力技、ひたすらねちねちと執拗に綴る修辞の豊富さ、その果てしない教養と気力・体力に驚嘆する。2020/07/25




