感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
157
大東亜戦争の敗戦で著者はビルマで英軍の捕虜になる。終戦後の約2年間をラングーンのアーロン収容所での体験を記した名著。抑留はソ連のシベリア抑留が有名だが、英国のビルマ抑留も酷い内容。本著で改めて気付かされたのは白人の有色人種への自然な差別意識である。現在は意識に変動があるかも知れない。だが簡単に意識が変わるかは不明である。彼らは白人以外を「家畜」同様に捉えている。捕虜の酷い食事への改善要望への回答は「家畜飼料として何ら問題ない」と自然に答える。女性兵も裸を見られても気にしない。価値観に影響を与える名著。2016/06/02
goro@the_booby
43
終戦となっても終わらない戦争体験を記した名著。戦争は国が起こしたおものであり何故に個人がこのような仕打ちを受けなければならないのか。捕虜生活も後半になると笑える話も出てくるが、家畜同様な人として扱われない経験は想像を絶する。罪と罰なのか?どこの国の人間も戦争となると隠れた一面が表れるものだな。しかし俺ならどこかで野垂れ死にしちゃうんだろうな。鳥葬じゃないんだから死体となって目玉食われたくないわ。戦争なんてろくなもんじゃないと思う今日この頃。2016/08/07
おかむら
40
日本軍の捕虜になった英豪蘭の手記を数冊読んだので、今度は逆の立場の本を。敗戦後ビルマで2年間英国軍に抑留された日本兵の手記。著者はその後京大の歴史学の教授になった人。古い本だけど今読んでも十分面白い! あとがき「私たちは経済成長に得意満面になり、その成果を充分以上享受しながら被害者意識を自己正当化の旗印にするという醜態をさらしている。そういう感覚は日本人が戦後一時期の謙虚さと反省心を失い、戦前の虚勢と倨傲のあのやりきれない姿勢をそのまま再現させた感じ」とあります。50年前にすでに今の状況を言い当ててる。2016/08/25
伊之助
37
知人の貸してくれた本。敗戦によりビルマ(現ミャンマー)で英国軍の捕虜となった著者の収容所体験記。体験の記述もさることながら、その間の人間観察から広がる著者のヨーロッパを、或いは日本人を捉える考え方は傾聴に値する。日本人の気質が当時とあまり変わっていないように、ヨーロッパ人がアジア或いは植民地の人々に向けた冷徹で酷薄な一面は、今現在も本質的には変わっていないのかも知れない。2016/02/20
Kawai Hideki
26
西洋史の一学徒だった筆者がビルマ戦線に送られ、終戦後、イギリス軍捕虜として2年間を過ごし、イギリス人の暗黒面を身をもって体験しつつ、冷徹な観察眼で書き綴った極限状態の比較文化論。死臭の中、まだ息のある日本兵の頭を潰して金歯を奪いとっていく現地人や、川を渡るイカダを慕うようについてくる看護婦の遺体など、とにかく凄まじい体験に満ち溢れている。家畜のように扱われ、帰国のめども立たない絶望感。その中をいかに生き抜くか、また、そのためのリーダーの資質はいかにあるべきかが、多くの命と引き換えに結晶化されている。2013/07/22