内容説明
満州事変以来、十数年にわたって続いた中国侵略の中で、日本軍が最も責められるべき汚点を残した南京事件とは?日本軍の戦闘詳報、陣中日誌、参戦指揮官・兵士たちの日記など、多数の資料を軸に据え、事件の実態に迫る。初版刊行以降二十年余、虐殺の有無や被害者数など、国の内外で途切れることなく続いた論争の要点とその歴史的流れをまとめる章を新たに増補。日中双方の南京戦参加部隊の一覧、詳細な参考文献、人名索引を付す。
目次
ジャーナリストの見聞
東京裁判
盧溝橋から南京まで
南京陥落
検証―南京で何が起きたのか
三十万か四万か―数字的検討
蛮行の構造
南京事件論争史
著者等紹介
秦郁彦[ハタイクヒコ]
1932年(昭和7年)、山口県に生れる。1956年、東京大学法学部卒。ハーバード大学、コロンビア大学留学、大蔵省、防衛庁勤務。プリンストン大学客員教授、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授などを務める。法学博士。専攻、日本近現代史。1993年度菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
78
笠原十九司の同名書の新版が出たので、それに合わせて通読。まず本書は明確に南京事件を「虐殺および強姦・略奪などの戦争犯罪」と位置づけている。虐殺された人数は4~5万と中国側の30万、東京裁判で言われた20万より少なめに出しているが、注意深く読めば「下限」を表している。また便衣兵という微妙な立場のものへの殺戮をどう解釈するかという戦場ならではの問題もあり、数字は控えめながら、兵站を考えず中央の方針を無視して南京に軍を進めた松井の「独断」が事件の背景にあることの指摘は重要だ。当時の日本のアジア人蔑視も指摘。2025/08/08
nnpusnsn1945
55
南京事件に関する資料を読んでおきたいので、本書を読んだ。否定派や大虐殺派にも異を唱えている。多くの資料、証言から読み解き、3〜4万人が不法殺害されたと結論付けた。日本陸軍の失策については、捕虜の扱い方針の欠如(最大の問題点。一応の裁判もせずに勝手に処刑した。そもそも中国人に対する日本の扱いもイマイチなのだが)、占領後の杜撰な軍政(住民保護の計画もなく、自活のための補給さえもない状態)、治安が確立していないのに入城式をしてしまったことが挙げられる。また、将兵への風紀粛正も振るわず、性犯罪も多発した。2021/06/06
wiki
24
「日本が満州事変いらい十数年にわたって中国を侵略し、南京事件をふくめ中国国民に多大の苦痛と損害を与えたのは、厳たる歴史的事実である。それにもかかわらず、中国は第二次大戦終結後、百万を越える敗戦の日本兵と在留邦人にあえて報復せず、故国への引きあげを許した。昭和四十七年の日中国交回復に際し、日本側が予期していた賠償も要求しなかった。当時を知る日本人なら、この二つの負い目を決して忘れていないはずである。」政治と化しては事実を直視できない。歴史考証のもと、何が起きたかを示さんとする本書は信頼に値すると思う。2022/06/13
yamahiko
19
一次資料を基本に、何が、いつ、何故起こったのかを丁寧に分かりやすく、かつ公平に著された良書です。南京事件は起こるべくして「起こしてしまった」虐殺だったと強く感じました。2017/04/16
アメヲトコ
12
1986年初版、07年増補版。笠原書と並ぶ南京事件についての代表的文献で、こちらの方がドライでフラットな叙述です。被害者の推定は4~5万人と、笠原書(10数万~20万)とだいぶ開きがありますが、それであっても不法な大虐殺であることは否定のしようがありません。とはいえ増補された論争史を読むと、この事件はセンセーショナルであるがゆえに政治的な問題になりすぎており、永遠に交わることのなさそうな「大虐殺派」と「まぼろし派」の不毛な争いを見ると、この事件を学術的客観的に論じることの困難さを痛感します。2025/08/18