内容説明
植民地での従軍・観戦に、福祉政策の着手に、第一次大戦の作戦指揮に、時には反革命に情熱を傾け、歴史を書くことで政治家としての背骨を作ってきたチャーチル。彼は1940年、ただ一国でナチ・ドイツに対峙する祖国を率いて立つ。イギリスの過去と現在を一身に体現した彼は、帝国没落の暗黒の時を、輝ける一ページに書き変えた。資料を博捜し、貴重な見聞を混えて描く巨人の伝記に、あらたに「チャーチルと日本」の一章を増補した。
目次
序章 この時、この試練
第1章 樫の大樹
第2章 剣とペン
第3章 政治家修業
第4章 人民の権利
第5章 世界の危機
第6章 再び保守党へ
第7章 荒野の十年
第8章 もっとも輝ける時
第9章 勝利と悲劇
終章 チャーチルと日本
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
16
ジャーナリストとして、後に政治家として多彩な方面にアクティブに行動し、余技として小説や絵画その才能を発揮したチャーチル。このように才気煥発な人物は、その強すぎる我と頭の冴えから、刺が強く他者との摩擦が起きやすく、無論彼も例外ではないが、それ以上に、常に大任に当たって私情を交えず、「公平」を最大の原則として物事を評価する彼の美質は、政敵すらも感嘆とさせるものだったようだ。本書は、バーリンの訳者でもある河合氏がこの現代史の巨人の挫折と栄光を入門書ながらしっかり詰め込んでいていい2014/04/19
MUNEKAZ
11
チャーチルの評伝。もとは1979年刊で少しクラシカルな趣だが、チャーチル自身の言葉も多く引用しながら読ませる内容。インド独立に最後まで反対する時代錯誤な帝国主義者なれど、仮想敵ドイツに対しては徹底したリアリストというチャーチルの二面性をよく描いている。増補に日本との関わりが描かれているのだが、あくまで大英帝国にとって有益か否かのドライな見方なのは面白い。また政治家になる前には軍人として功績をあげ、盛んな文筆業に幾度の落選も乗り越えるなど、とにかくタフな人だなと強く思わされた。2020/05/20
ジュンジュン
7
その生涯を終えた時、「居酒屋の客は、ある者は褒め称え、ある者は貶しつけた。すべての人が、今過ぎ去った一つの時代に懐かしく想いめぐらしていた。そして私の友人は、普段は歌声の絶えることのないウェールズの居酒屋に、その夜ばかりは歌がないことに気づいた」(314p)。そんな好むと好まざるにかかわらず、忘れえぬ存在チャーチルの記憶。2020/09/14
ふぇるけん
7
まさに有事のためにいるような政治家。平和な時代が続いていたら、彼はどこかで政界から弾きだされただろう。彼がこの時代に英国にいなかったら歴史が変わっていたかもしれない。戦時中、急ぎでないものはすべて棚上げにして戦いにすべてのリソースを集中させた政治手腕に脱帽。2013/03/04
たみき/FLUFFY
6
17世紀に生きたチャーチルの祖先から始まる伝記。学生時代から落ちこぼれだったが、若い時から執筆活動を行ってその文才に磨きをかけていた。保守→自由→保守と党を移り、いくつか成立させた法案もあるが、失敗の方が多くしかも目立つ。ダーダネルス作戦の失敗により、約10年は政治に絡まずいたが、チャーチルが輝いたのは、やはり第二次世界対戦の時だった。多くの犠牲を払って勝利しても英国が失ったものは大きい。入門編というものの少々難解。ざっと流れをつかむのには良いと思います。 2018/03/15