内容説明
一九六五年、経済的に繁栄する日本からアフリカ中央の一小国ルワンダの中央銀行総裁として着任した著者を待つものは、財政と国際収支の恒常的赤字であった―。本書は物理的条件の不利に屈せず、様々の驚きや発見の連続のなかで、あくまで民情に即した経済改革を遂行した日本人総裁の記録である。今回、九四年のルワンダ動乱をめぐる一文を増補し、著者の業績をその後のアフリカ経済の推移のなかに位置づける。
目次
1 国際通貨基金からの誘い
2 ヨーロッパと隣国と
3 経済の応急措置
4 経済再建計画の答申
5 通貨改革実施の準備
6 通貨改革の実施とその成果
7 安定から発展へ
8 ルワンダを去る
増補1 ルワンダ動乱は正しく伝えられているか
増補2 「現場の人」の開発援助哲学
著者等紹介
服部正也[ハットリマサヤ]
1918(大正7)年、三重県生まれ。東京帝国大学法学部卒業後海軍予備学生となる。終戦を海軍大尉としてラバウルで迎え、引き続きラバウル戦犯裁判弁護人となる。47年に復員し、日本銀行入行。65年、ルワンダ中央銀行総裁としてIMF技術援助計画に出向し、71年帰国。翌年世界銀行に転出、80年に副総裁となり、83年退任。ケーヨーリゾート開発社長、同会長を歴任するほか、アフリカ開発銀行、国際農業開発基金などの委員を務めた。99年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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岡本
168
独立後のルワンダで第二代中央銀行総裁を努めた服部正也氏自らによる体験記。大虐殺など近年のルワンダのイメージが強かったが、読んでみて全く違うルワンダを知る事が出来た。アフリカの事となると日本人は違う人種の人々と捉えがちだが、こういう本を読むと固定観念を一つ打ち壊した様に感じる。勉強になった。2018/03/23
はっせー
149
中央アフリカにあるルワンダ。いまもその国の名前を聞いてもなにがあるかわからない人も多いだろう。1960年代ならなおさら知らない人の方が多い。1960年代に著者である服部さんがルワンダの中央銀行の総裁となって財政を立て直す実話である。この本をポイントとなるのは発展途上国の実情からみる経済学・財政ではないかと思う。色んな本で経済学や財政を勉強出来るがどれも先進国をベースにしている。だがこの本は本当になにもないが財政だけ赤字の国をどう立て直すかのプロセスが書かれていて面白い!ぜひ読んでほしい本になっている!2021/11/27
koji
131
ずっと読みたいと思っていて、漸く完読しました。感服です。それにしても、金融、財政のテクニカルタームが満載で必ずしも読み易くない本書が、つい2年前のリバイバルヒットを含め50年に亘りロングセラーになっているのは驚きです。海軍教官時の著者は「殴るし怒鳴るし」の鬼教官だったそうですが、私は「情と理」が見事に融合された「三現(現地・現物・現実)主義」の人とみました。又本書は、TRIAL&ERRORを繰り返す過程が丹念に書かれた秀逸な経営の教科書でもあります。このタフな日本人のDNAを受け継ぐ若者が続くように。良書2023/06/09
trazom
127
中公新書ロングセラーの名著。1965年、日銀マンの著者がルワンダ中央銀行総裁に赴任した壮絶な6年間を綴った手記。通貨改革だけでなく、大統領からの直接の要請により経済再建計画の答申を一人で書き上げ実行に移す。ルワンダ人を無能で怠惰だと見下す欧米人とは一線を画し、ルワンダ人と直接話をし、彼らの苦労や課題を汲み取ってゆく服部さんの態度は、正に「フェア」。憐れみや同情の優しさでなく、ビジネスの厳しさを貫きながら、相手の尊厳を傷つけない。「ノーと言っても友だちになれることを教えてくれた」と評される立派な人物である。2024/09/25
KAZOO
125
この著者のこの本は初版とこの増補版両方とも所有しています。最初に読んだときは、総裁とは言うものの、アフリカの小さな国の中央銀行の責任者をよく引き受けた、という気がしました。日本にいればエリートとして過ごすこともできたのでしょうが、読んでいるとこの仕事のだいご味を十分に味わっている気がしました。海外協力の基本ではないでしょうか?人によることもあるのでしょうが、やはりキルギスで大統領顧問になった日銀の人もいます。自分の仕事に不満を持っている人はぜひ読んでください。2015/10/14
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