出版社内容情報
文明対野蛮に文明が勝つとは幻想だ。アテナイはペロポネソス戦争に敗北、文野の戦いにスパルタが勝利した。古代の教訓を学べ。
内容説明
二十七年間の戦争は何をもたらせたか。制海権争覇をかけてアテナイとスパルタが争ったペロポネソス戦争を、かくも冷静に観察した男。
著者等紹介
トゥキュディデス[トゥキュディデス] [Thoukydides]
前460ころ~前400ころ。古代ギリシアの代表的歴史家。アテナイの名門に生まれ官職に就くが、トラキア方面の防衛責任者となるもスパルタ軍に要地を奪われ、20年にわたり追放生活を過ごす身となる。追放中にアテナイ対スパルタの争覇戦『戦史』を記述した
久保正彰[クボマサアキ]
1930年生まれ。西洋古典学者。53年ハーヴァード大学卒業(古典語学、古代インド語学専攻)。57年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。成蹊大学助教授を経て67年東京大学教養学部助教授、75年教授。91年退官、名誉教授。92年に日本学士院に選任され2007年より第24代院長を務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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泰然
33
元々肥沃ではない地理であったが、海上通商経済を通して徐々に国力を磨き、ペルシアの侵攻を破った貢献によって、国際政治の中心となったアテナイ。塩野女史の言葉を借りればギリシア世界は言うなればイノベーターな短距離走者でアテナイは様々な賢人や智将を排出したものの、ペロポネソス戦争で崩壊した。著者が追放生活のなかで記した歴史は、地中海風土の神話や英雄談の要素を排して政治力学のリアリズムと指導者の本質を実証的に記し、戦略と人間の関係を洞察する。「話を目で眺め、事実を耳で聞く」人間の存在の危険性の警鐘は現代でも響く。2023/06/24
masabi
13
【概要】ギリシア世界を二分したアテナイとスパルタが対峙したペロポネソス戦争を記した歴史書。抄訳。【感想】英雄譚ではなくあくまで戦争が主題で、開戦までの経緯・戦闘・和議交渉などを具に書き残す。要所要所でぶたれる演説がよく、優劣を問わず各位の目的を果たそうとレトリックで飾り正義や利益、名誉に相手に訴える。覇権国の新興国に対する恐れ、欲のために和平を結ぶ機会を逸し泥沼の戦闘にもつれる、利益を求めて同族と対決するといった戦争の様相が描かれる。国際政治学の古典とされるのも納得の一冊だ。2023/12/01
mkt
5
戦史の中で、いくつかの演説が記されているが、その内容に学びが多い。戦史なので戦い方等が参考になるかと考えていたが、演説で記されている内容の方が、考えさせられる内容となっている。/演説の一例(一部抜き出し):人は進んでゆずる相手にはおのれも恨みを残さず勝ちを譲るが、あくまでも勝たんとする増上慢に対しては、おのれも思慮を捨てて勝負に生命を賭する/ 20201120読了 338P 47分2020/11/20
遊未
4
内容はポリスの内乱とペロポネソス戦争。その戦争一年目のペリクレスの演説は引用している本は多く有名だが、その後疫病に苦しむ人々にペリクレスが何を語ったか?支配者であるとはどういうことかと理想ではない現実を語っている。著者は内乱を契機として始まる災厄について「人間の性情が変わらない限り、・・・未来の歴史にもくりかえされるであろう。」と語る。本としては地図の数を増やし、見やすくわかりやすいものにしてほしかった。1ページ分ではとても無理。そして、本文も省略部分が多すぎるのでせめて分量的に2冊は必要かと思う。2014/06/18
古隅田川
2
古代ギリシアの歴史書。当時の社会事情、戦争の背景、戦闘の様子や戦術、為政者の演説等が細かく記述されている。2000年以上前に書かれているが現代にもあてはまることばりで、洋の東西と時代を問わず、人間は同じことばかりを繰り返していると感じた。時代を超えた良書だと思う。 Wikipediaでアテネはイオニア人、スパルタはドーリス人が建てた国(都市)。スパルタは自らをラケダイモンと称する等の知識を補充しながら読み進んだ。「洋の東西と時代を問わず」と書いたが演説の長さは古代ギリシア固有か。とにかく長い。 2021/09/16