内容説明
強烈な武人の精神をもち続けた傑出した文人政治家の自叙伝。
著者等紹介
新井白石[アライハクセキ]
1657~1725。江戸中期の儒学者、詩人、政治家。江戸に生まれる。青年時代まで独学ですごしたが、1686年、木下順庵に入門。やがて順庵の推挙により、甲府藩主徳川綱豊の侍講となる。1709年、綱豊改め家宣が第六代将軍となってからは、幕府政治に深く関与することになる。七代家継の時代までの善政は「正徳の治」と呼ばれる。次の吉宗の代には政治上の地位を失い、晩年は不遇の中に著述にはげんだ
桑原武夫[クワバラタケオ]
1904年(明治37年)福井県生まれ。京都大学文学部仏文科卒。京大人文科学研究所における共同研究の中心となって活躍。京都大学名誉教授。文化勲章受章。著訳書多数。1988年(昭和63年)逝去
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感想・レビュー
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紙狸
13
2004年に中公クラシックスに収録された桑原武夫による現代語訳。新井白石の自叙伝。岩波文庫の原文は手強そうだったので、こちらを読む。「上」「中」「下」に分かれている。父親のことを詳しく書いた「上」は、自伝に詳しい文学研究者佐伯彰一が絶賛している。個人的には、白石が幕政の中心にあったころを回想した「中」の方が面白かった。特に朝鮮通信使を巡るくだり。今日、日韓交流の源流として評価される、対馬藩の雨森芳洲のことを「口さきだけで人につきあう」などと酷評している。2022/01/03
anarchy_in_oita
6
中編は流し読み。人格としては尚武的な精神と儒教道徳を根底に持ちながらも、具体的な事案(外交政策や裁判)に際しては割と現実的というか、現代人でも納得できるような落とし所を見つけて処理していてかなり合理的な人だと思いました。本筋とは全く関係ないですが、海外から無用の商品を輸入して国内の金銀が流出していることを見て国内生産を強化しようとするような記述がありましたが、こういう話って江戸時代からやってたのかよ…と思いました。2020/05/24
qwer0987
3
正徳の治の新井白石の自伝で当時の雰囲気などが興味深い。読み進めるうちに強く感じたのは、白石の我の強さだ。朝鮮通信使や改鋳などからは、自分の正しさを信じ遂行しようという個性の強さを感じる。彼が切れ者なのはよくわかるけど、萩原重秀や林信篤に対する非難を読む限り周囲との軋轢は絶えなかっただろうことはひしひしと感じられた。そんな白石の政治判断は基本原則論に基づいているように見える。けど事件の判決に対する見解などからは容疑者の事情を考慮するなどの杓子定規でない思考も垣間見え、一面的でない白石の人間性を見た気がした。2021/08/01
つばめ
3
現代語に訳されているため、大変読みやすくなっていました。本書の楽しみ方はさまざま。自伝として白石がどんな人物だったのかを紐解くも良し、日本の歴史に想いを馳せるのも良し、徳川家の変遷、風俗風習などなど…。また、富士山噴火〜その後の描写も載っており、興味深い話が満載。正直なところ、よく分からないところは流し読みしましたが、肩肘張らずに読めば、非常に楽しめる本なのではないかと思います。2017/01/28
seychi
3
当時としては珍しい自叙伝的作品江戸時代中期の幕府の具体的な動向を垣間見れるのは興味深い。とは言えこの時代に相当詳しい人が読むか、学者が研究目的に読むものという感覚で挑まないとちょとつらいかも。それと自叙伝だけに自己バイアスがややかかってる感じも否めません。朝鮮通信使節のくだりは面白かった。2013/10/09