出版社内容情報
日本人の神としての「まれびと」の発見と、まれびとが発する「呪言」に文学の発生を見出す本論は、それまでの日本人の神観念に新しい視野をもたらし、文学史研究に新生面を開いた。
内容説明
日本人の神の発見、その神が発する言葉に文学の発生を見る。
目次
国文学の発生(第三稿)―まれびとの意義(客とまれびとと;門入り ほか)
国文学の発生(第一稿)―呪言と叙事詩と
国文学の発生(第二稿)(呪言の展開;巡遊伶人の生活 ほか)
国文学の発生(第四稿)―唱導的方面を中心として(呪言から寿詞へ;叙事詩の成立とその展開と ほか)
短歌本質成立の時代―万葉集以後の歌風の見わたし(短歌の創作まで;奈良朝の短歌 ほか)
著者等紹介
折口信夫[オリクチシノブ]
1887~1953。国文学者、民俗学者、歌人、詩人。大阪生れ。歌人、詩人としては釈迢空を名のった。天王寺中学卒業後、国学院大学に進み、国学者三矢重松から深い恩顧を受けた。1919年国学院大学講師となり、のち教授として終生国学院の教職にあった。手がけた領域は多方面にわたり、そのいずれもが独創的な内容を持っている。民俗学的国文学、日本芸能史論の創始者であり、成し遂げた業績はのちに“折口学”と称される
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感想・レビュー
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肉欲棒太郎
2
文学の信仰起源説に立つ折口は、来訪神「まれびと」の発する呪言から日本文学の発生を説く。「あるじ」の原義や、常世のまれびとと土地の精霊との主従関係のくだりなど興味深い。柳田「祖霊」と折口「まれびと」との相違は、〈外部〉の観点の有無だろう。2016/01/09
ずしょのかみ
1
歴史は合理的な要素によって組み立てられるが、折口信夫は不合理的な要素によって歴史を組み立てる。例えば古代における私有地荘園は、人びとによる物欲によるものと説明されることが多いが、折口は「つぎ」において死者の魂をおさえるためにできた名代・子代の部が荘園の原型とする。つまり荘園の発生を物欲ではなく信仰にもとめたのだ。現代の合理的なマルクス主義的唯物的史観からは考えられない。 2017/01/27