内容説明
儒・道・仏三教の優劣を戯曲構成で論じた若き空海の出家宣言。
目次
三教指帰
文鏡秘府論・序
著者等紹介
空海[クウカイ]
774‐835。真言宗の開祖。諡号は弘法大師。讃岐国(香川県)多度郡に生まれる。804年入唐して長安青竜寺の恵果に学び、真言密教の第八祖となる。806年帰国。修禅の道場として高野山金剛峯寺を開創し、また東寺を給預され真言密教の根本道場とする。宗教家としての活動にとどまらず、平安初期のわが国の社会・文化全般に多大の寄与をなした
福永光司[フクナガミツジ]
1918年(大正7年)大分県生まれ。1942年、京都帝国大学文学部哲学科卒業。東京大学文学部教授、京都大学人文科学研究所所長などを歴任。2001年(平成13年)逝去
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コーキ
3
本格的な仏教の古典を読むのは初めてでしたが、訳が分かりやすくてすらすらと読めました。他の方も仰っていますが、こういうのを書くことが若き空海にはきっと必要だったのだと思います。自分の決断をはっきりと言葉にして、選んだ道を迷わず進んでいくためにも。2015/04/08
ハヤカワショボ夫
2
空海の生涯は俗-非俗-…を繰り返しているが、20代の7年の山岳修業に決意表明した「三教指帰」。自らのためだけに記されたもので傑作です。「聾瞽指帰」に加筆しこの書をまとめたことを思うと、空海は生涯を通しこの書を見返しながら、原点を取り戻していたと感じます。三教(儒・道・仏)に比較について、儒は俗、道は非俗、衆生救済の優位性が仏教と説くのがこの書です。また「文鏡秘府論・序」は言葉が「教」を説くための根源で文章はその要であり、誰でも漢詩文を創作することができる手本となる要諦をまとめたものです。【家】★★★2015/05/02
まじょるか
2
中国では唐代に儒道仏の三教を比較する論議が盛んに行われたそうだ。▼「春の花は枝の下に落ち、秋の露は葉の前に沈み、ゆく水の流れは暫くも留まりえずつむじ風の音たつることいくばくのときもなし。」漢学の知識を如何なく披露。▼「かくて仏教の経典は微妙深遠でその門に入ることが困難であり、道教の経典は幽玄で同調者が少なく、儒教の経典は日常卑近でその主張がいくつにも分かれる。」空海24歳の時の著作。2015/04/14
霹靂火 雷公
1
概要は散見していたので、どんな内容なのかと通読。儒教については露骨に「出世欲や、家庭でも外面の善さを求めるガリガリ亡者」のように描いているのに違和感を覚えたが、「仏教イチバン!」と叫びたかったであろう若き空海には必要な表現だったのだろう。(正否は兎も角)2015/04/05
アオヤギ
0
空海24歳、唐に渡る前の作。「儒教も道教もダメ、やっぱ仏教っしょ!」、まとめてしまえばそれだけの話なのだが、儒教・道教側の意見を最初に登場人物に語らせ、最後に仏教(仮名乞児)が論破するという構図は非常に素晴らしいし、様々な名句を引用しまくりこいつどんだけ頭良かったんだよ…と恐れおののく。2012/01/31