内容説明
形而上学から出発して道徳問題の解明に向かう哲学的探究。
目次
省察
情念論
書簡集
著者等紹介
デカルト[デカルト][Descartes,Ren´e]
1596~1650。フランスの哲学者、数学者。数学的明証性を学問的認識の模範と考え、あらゆる不合理を批判検討する立場を確立した。そのことによってしばしば近代哲学の父といわれる。1637年公刊の『方法序説』は思想の領域における「人権宣言」とも称される。長くオランダに隠れ住んだが、終焉の地はスウェーデンであった
井上庄七[イノウエショウシチ]
1924年(大正13年)大阪府生まれ。京都帝国大学文学部哲学科卒。西洋哲学史専攻。1987年(昭和62年)逝去
森啓[モリアキラ]
1935年(昭和10年)福岡県生まれ。京都大学大学院博士課程(哲学専攻)単位修得。茨城大学名誉教授
野田又夫[ノダマタオ]
1910年(明治43年)大阪府生まれ。京都帝国大学文学部哲学科卒。京都大学・甲南女子大学名誉教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
72
「省察」「情念論」を収録。「省察」では「方法序説」での認識や存在等についての思索をより詳細に追ってゆきます。デカルトは自分が感覚する世界を、神を疑い、そうして到達するのが、しかしそれを考える私は存在するという有名な真理。その”考える我”を基盤に神や物体の存在が証明されますが、この信ではなく疑からの真理の観照に中世との懸隔を感じるよう。また、情念を「欲望」「忌避」とするスコラ学に対し、情念に最も多く動かされる者が「最も多くの楽しさを味わいうる」とする「情念論」にも中世と近代の結節点・転換点を見るようでした。2023/12/27
白義
15
ありとあらゆるもの全てが悪魔に騙されて認識しているのではないかという、徹底的懐疑を方法にそれでも絶対に残る自我と、そしてその自我に完全という概念を与えたはずの完璧な神という原理を抽出するデカルトの主著、省察。不完全な精神に完全なものを吹き込んだのは完全なる神以外にありえない、というのは完全という言葉を微妙にトリック的に使っている気がするのだが、明らかにデカルトの倫理では実は自分の精神以上にこの点が全ての思考のコアなのは確かであり、古臭い護教論神学と笑うよりはその今との思考原理の断絶性もまた重要なのだと思う2017/06/24
肉欲棒太郎
4
『省察』では『方法序説』や『哲学の原理』などで展開された、精神と身体との区別や神の存在証明などの形而上学について、より詳細に論じられている。『情念論』は、後の実存主義にも繋がりそうな“人間らしさ”についての考察で、なかなか面白い。デカルトによれば「驚き」があらゆる情念の最初のものであるとのこと。情念を生理学的な構造と関連づけるところは、ある意味唯物論的な観点とも言えるのではないか。2016/10/20
鳴海豆腐
2
哲学書って、読むの時間かかります。これも時間かかりました。でも、頑張った甲斐があったように思います。人間として生きてる限り、考え続けないといけないと思います。考えなくなった時点で、もう人間としての価値は消失するのではないでしょうか。生きてる限り、考えに考えて行動しよう!そう思いました。
もりえんてす
2
デカルトの著作を一通り読み終えて思うのは、『方法序説』や『哲学の原理』は置いておいて、とりあえず『省察』さえ抑えておけばよいかなあ、と。ただここに収録されている『情念論』はその三冊と違った毛色の本なので現代の生物学的には考えられない考察も含まれているけど、だからこそなかなか面白い内容の作品なので、興味があったら読んでおいてもいいかも。2012/05/15