中公選書<br> 戦争とデータ―死者はいかに数値となったか

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中公選書
戦争とデータ―死者はいかに数値となったか

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  • サイズ 46判/ページ数 280p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784121101402
  • NDC分類 391
  • Cコード C1331

出版社内容情報

戦争全体の把握にはデータが肝要だ。特に死者数のデータは、戦争の規模、相手との優劣比較で最も説得力を持つ。ただ発表されるデータが正しいのかは常に疑念があるだろう。ウクライナ戦争での戦死者数についても、ウクライナ、ロシア双方から発表される数字は異なる。では、そうしたデータはどのように集められてきたのか。

 戦場での死者数は、総力戦となった第1次世界大戦以降、国家による将兵だけの把握では難しくなり、赤十字国際委員会、国際連盟といった国際機関が介在していく。しかし第2次世界大戦後、特定地域での内戦・紛争・ゲリラ戦が頻発。政府側・反政府側で異なる数字が発表されていく。大国間対立で国連が機能不全に陥るなか、国際的な人道ネットワークが、先進各国や国連の支持を受け、死者数の調査・精査を行い発表していく。

 本書では、特に1960年代以降のベトナム戦争、ビアフラ内戦、エルサルバドル内戦から、第3次中東戦争、イラン・イラク戦争、旧ユーゴ紛争、そして21世紀のシリア内戦、ウクライナ戦争を辿る。その過程で国際的な人道ネットワークが、統計学や法医学の知見を取り入れ、どのように戦争データを算出するようになったか、特に民間人死者数に注目する。また、データをめぐる人々の苦闘にも光を当てる。

内容説明

戦場での死者数は、第2次世界大戦後、内戦やゲリラ戦が主流となり、国家による把握が難しくなった。異なる数字が発表され、国連が機能不全に陥る中、法医学や統計学を取り入れた国際的な人道ネットワークが台頭してきている。本書は、特にベトナム戦争からウクライナ戦争までの死者数、とりわけ文民死者数の算出に注目。国家や武装勢力の軋轢や戦乱の中、実態把握のために「ファクト」がいかに求められるのか、苦闘の軌跡を描く。

目次

序章 専門家の発言はすべて正しいのか
第1章 兵士はどこへ行った―戦死者保護の軌跡
第2章 殺してはならない人間―文民保護の道程
第3章 戦争の証言者の登場―NGOと国連
第4章 死者を数える―戦争のなかの統計
第5章 遺体を掘り起こす―一九九〇年代の戦争と法医学
第6章 化学兵器を追う―いかに実戦投入を確認するか
終章 戦争の実像を知りえないとしても

著者等紹介

五十嵐元道[イガラシモトミチ]
1984年北海道生まれ。2014年英サセックス大学国際関係学部博士課程修了(D.Phil)。北海道大学大学院法学研究科高等法政教育研究センター助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、関西大学政策創造学部准教授を経て、23年より教授。専攻は国際関係論、国際関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

136
報道で「ウクライナ侵攻で死者が50万人」とある。さて、死者数は誰がどうやって数えるか、戦闘員と文民の内訳は?、戦場で遺体はどう処理されるかなどという疑問に向き合ったユニークな一冊である。戦争統計データの取り方、文民保護の考え方(文民の定義は?)などの国際的なルール作りの歴史がよくわかる。国民国家が信用できない中で、NGOが重要な機能を果たしていることも理解できた。でも、どんなに統計手法を厳密にしたところで、一人の貴重な人生を「死者1名」というデータとして扱う不条理に対する空しさは、戦争も震災も一緒である。2024/02/01

パトラッシュ

128
「1人の死は悲劇だが戦争での数百万の死者は単なる統計」という。20世紀以降は兵士だけでなく一般市民が戦争の巻き添えで死んだり、民族的宗教的理由で組織的に虐殺される事例も珍しくない。国連や赤十字は何とか統計ではなく尊厳ある人間の死としての記録を残そうと努めてきたが、各国の政治的思惑や面子から事実調査を妨害され限界を露呈した。そのため最近は国際的なNGOが独自に活動し、政治抜きの法医学的調査や証言集めなどを行っている。帝国主義が再興してきたとされる現代だが、人道ネットワークは人間らしさの最後の砦かもしれない。2026/09/05

どら猫さとっち

14
戦争で亡くなられた方たちは、どのように統計するのか。困難なデータ方法は、どのようにしているのか。本書はそれを詳しく説明している。とはいえ、死者数の数値には、どのような思いで戦場に赴き死んでいったか。また行方不明者もいることもあり、数値化の裏にある生命の尊さも浮かび上がる。データの誤魔化しや改竄はあってはならないが、統計することの難しさに思い悩ます。それは震災でも同じことが言える。2024/03/05

かんがく

12
今まであまり触れてこなかったアプローチで戦争について学べた。統計という科学が常に受け容れられるわけではない。2025/09/18

おやぶたんぐ

11
戦争による人間の死が単なる数字に換算されてしまう恐ろしさ、と言われるが、数字に換算すらされない恐ろしさには到底及ばない。そして、数字に換算する困難さ、換算された死の意味を認識する困難さも案外軽視されているようにも思われる。本書はこの恐ろしさ、困難さの一端を見せてくれる。少なくとも、党派性で全てを論じ、分かったような気になるのが誤りであることだけは間違いないだろう。2024/02/11

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