出版社内容情報
教育の不平等をめぐっては多くの研究・議論が行われてきた。
だが、今なお解決には程遠い。
その理由は、日本人の認識枠組みにあり、意味が曖昧なまま外来の流行語・翻訳語を使うため、議論がすれ違うのだと著者は説く。
「大衆、機会均等の語義は原語と訳語でどう違うのか」「階級より階層、不平等より格差の語が使われる理由」など、鍵概念を手がかりに日本社会の思考の習性を探る。
日英で教鞭を執る著者の比較知識社会学。
【目次】
まえがき 教育論議は饒舌なのに、なぜ問題は解決しないのか
1章 「教育格差」論議の比較知識社会学
1 問題の所在
不平等に対する日本の向き合い方/実態把握の進展/政治や行政、私たちの認識を問う
2 「知識」は社会的に構成される
知識社会学とは何か/教育の現場や政策関係者の「常識」
3 比較知識社会学の試み
日本語は翻訳語でできている/「濾過の過程の見落とし」/輸入学問としての社会科学
4 「大衆教育社会」という経験
「大衆教育社会」とは何か/戦後日本の言説小史/「大衆」「能力主義」「格差」……/本書が取り組む課題
2章 「大衆」――生まれた時代と現代
1 大衆の発明
「大衆」の比較知識社会学/「大衆」という言葉を発明した男/工業化・都市化と普通選挙法/一向に明瞭でない正体/新奇性ゆえの流行
2 西洋における「大衆」概念
オルテガの大衆論/英国のmassの歴史/総力戦体制下における「国民化」
3 戦後日本の「大衆」「大衆社会」
1950年代の論争/西部邁の「高度大衆社会」論/大衆にまつわるネガティブさ/2章のまとめ
3章 「大衆化」――曖昧にされたエリートvs.マス
1 大衆教育とは何か?――戦前という前史
8割を占めた小卒者への教育/戦前教育学の重鎮の認識
2 強制的均質化と大衆教育
山之内靖の総力戦体制論/野口悠紀雄の1940年体制論/戦時の教育改革を率いた阿部重孝
3 「階級」の欠落
高校教育の大衆化/教育社会学の泰斗が見た60年代/トロウの発展段階論/第一人者による意訳/階級とmass higher education/曖昧化の作用/3章のまとめ
4章 「機会均等」――原語 “opportunity” との決定的違い
1 開かれた機会(opportunity)の信仰
教育を重視したブレア政権/「第三の道」とは何か
2 アメリカにおけるopportunity
19世紀のアメリカン・ドリーム/アメリカ公教育の思想基盤/コモンスクールの思想
3 日本語の(教育)機会の均等
「機会」とは何か/均等と平等の違い/日本の消極性・形式主義/戦後の機会均等/高校教育と高等教育の「機会均等」/トロウ論文が示すopportunity概念
4 「試験」が教育と成功を媒介する
立身出世の日米比較/試験という媒介項/4章のまとめ
5章 「格差」と「不平等」――「階級」でなく「階層」を使う功罪
1 メリトクラシー理解の日英比較
メリット=知能+努力の謎/階級社会とIQ/頑迷な誤謬/11歳の試験イレブン・プラス
2 日本における能力主義と知能、努力
努力主義をめぐって/知能検査への不信感/努力と適性(知能・素質)/能力主義の日本的理解の特徴
3「階級」の消長
戦前の階級意識と階級概念/「階級」という言葉の消
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