出版社内容情報
父と子と聖霊は本質的に同一だという、初学者が誰しもつまずく教えについて専門家が丹念に解説。キリスト教の根本思想に迫る。
【目次】
内容説明
キリスト教の三位一体とは、父なる神、子なるイエス、聖霊の三者は本質的に同一だとする説である。ユダヤ教から分派したキリスト教が世界宗教へと発展を遂げる過程で、教会は神とイエスの関係の解釈に苦慮した。教会内の様々な派閥がしのぎを削った異端論争を経て、四世紀後半に三位一体の教義は確立を見る。初学者が誰しも躓く、この謎の多い教えについて、専門家が丹念に解説。キリスト教の根本思想に迫る。
目次
序章 キリスト教の成り立ち
第一章 三位一体の起源
第二章 キリストの神性をめぐる議論の始まり
第三章 異端論争の只中へ
第四章 教義理解の深まり
第五章 三位一体論教義の完成
第六章 西方ラテン世界における展開
終章 三位一体論の行方
著者等紹介
土橋茂樹[ツチハシシゲキ]
1953年(昭和28年)、東京都生まれ。上智大学大学院哲学研究科博士後期課程単位取得退学。上智大学哲学科助手、豪州カトリック大学・初期キリスト教研究所客員研究員、中央大学文学部教授などを経て、中央大学名誉教授。専門は古代中世哲学、教父学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Francis
14
キリスト教の根本である「三位一体」の教説がどのように確立したかを追った入門書。クリスチャンの私にも難しかったです。キリスト教と本当は合わないギリシャ哲学の考え方が入り込んできて議論が複雑化したことがうかがえる。初期のキリスト教会の公会議は東方教会の聖職者・神学者が大半で西方教会はほとんどいなかった、と言うのが結構衝撃的でした。しかしながらここで書かれた神学議論があったればこそキリスト教は宗教として確かなものになったのはまちがいない。日本でも「三位一体」と言う言葉が安易に使われていますが、やめて欲しいです。2025/09/10
辻井凌|つじー
3
神・イエス・精霊の関係をこれでもかとこねくり回す。キリスト教を支えた一大理論をめぐる闘争の物語。 新しい宗教ほど既存宗教から守るために理論武装していく。その行き着く先が本書にある。2025/08/07
(ま)
3
In the name of the Father, and of the Son, and of the Holy Spirit, Amen. 3つのヒュポスタンス(位格、ペルソナ、実質存在)、1つのウーシアー(本質存在) 敬虔で頭の良い方々が捏ねくり回した教義問答の結果異端が死屍累々、そして残ったフィリオクエ問題...2025/08/06
うきこ
2
キリスト教における三位一体教義をその変遷を辿りながら歴史を追う本。 おそらくこれでも入門書に近い本なのだろうが、難解な哲学用語、似たような人名が散見されるので、初学者には苦しい難易度。でも読めなくはない。 意外だったのは三位一体がキリスト教が東西に分裂する前に確立。しかも論争の舞台となったのがほぼ東方だという点。西方の関わりは薄いらしい。それでも何故西方で受容され、今でも主要な祈りとしてミサで唱えられているのか。その点について本書では触れられていないので、今度はそちらを勉強したい。2025/09/09
あまいろ
1
すごい。哲学史などの通史的な教科書では、三位一体論は西方のアウグスティヌスを取り上げるだけで終わってしまう。しかし本書は5章までを東方教会の記述に費やし、6章でアウグスティヌス、終章で東西分裂に触れるという配置で、東方・ギリシア圏に重きを置いている。つい西方・ローマ教会だけで考えてしまいがちだが、その教義の前提となっている公会議が東方世界で行われ、東方世界の影響を強く受けていることは、思い出されなければならない。2025/09/21