出版社内容情報
二〇世紀から現在にいたるまで、多様化していくデモクラシーの潮流を捉える。指導者、競争、市民参加、熟議・闘技、現代思想、ケアなど多様な論点を通して、民主主義の現在地とこれからを展望する。
内容説明
二〇世紀以降、思想・理論ともにさらなる多様化が進む民主主義。本書は、政治学をはじめ、ウェーバー、シュミット、シュンペーター、アーレント、デリダ、ムフなどの思想から、その大きな潮流と意義を捉える。指導者や選挙による競争、市民参加、熟議/闘技、ポピュリズムといった多くの論点から、現代デモクラシー論の可能性に迫る。試行錯誤を繰り返してきた軌跡を通して、二一世紀の民主主義を模索する試み。
目次
序章 民主主義の世紀
第1章 指導者と民主主義
第2章 競争と多元主義
第3章 参加民主主義
第4章 熟議と闘技
第5章 現代思想のなかの民主主義
終章 未来に手渡す遺産として
著者等紹介
山本圭[ヤマモトケイ]
1981年、京都府生まれ。立命館大学法学部准教授。名古屋大学大学院国際言語文化研究科単位取得退学、博士(学術)。岡山大学大学院教育学研究科専任講師などを経て、現職。専攻は、現代政治理論、民主主義論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
87
20世紀の民主主義の歩みを振り返ることを通じて、「論点」が非常に明確に整理されていて、とてもいい本だと思う。独裁は是か非か、支配はエリートか大衆か、直接か代表か、参加か競争か、熟議か闘技か、対立の克服か合理的な線引きか、理性か感情か、などに揺れる道のりを辿る。改めて、シュンペーターの「競争型エリート主義」の影響の大きさを実感するが、その反動が、空虚なシニファンに踊らされた今のポピュリズムに繋がっているとしたら悲しい。最終的には「民主主義は、理念か制度か」という根本的な認識の問題に帰着するのかもしれない。2021/04/14
フム
36
とても勉強になった。私が政治を身近な問題として考え始めたのは2011年以降だ。原発の是非、安保法案への抗議行動を目にしながら、しばしば運動のキーワードとして目にした「民主主義ってなんだ?」ということを考えた。日本に民主主義は実在しているのだろうかと。定義をめぐって様々な論議があり、収拾がつかない概念のことを「本質的に論争的な概念」と呼ぶそうだ。民主主義もその一つに数えられるという。そのような厄介な概念である民主主義について、本書は政治思想史を手がかりに20世紀の民主主義が歩んで来た道程を振り返っている。 2021/07/24
ヤギ郎
14
良書。現代民主主義を支える思想を網羅的に説明している。シュンペーターなど、経済分野の知識人を政治思想史の文脈で紹介しているところは新鮮で、非常に勉強になった。近年耳にする「熟議民主主義」まで流れ着く過程を本書で理解することができるだろう。政治思想史の入門書として利用でき、参考文献表から今後の勉強へ繋げることができる。本書をきっかけにフランス現代思想の勉強をしようかしら…。2021/02/27
テツ
13
たまたま今の世の中で選択されている(ことが多い)だけであって、人類にとって民主主義が最良の統治システムなのかは解らないし、たかが四文字の『民主主義』の中にも膨大な種類がある。絶対の正解など存在しない以上、社会のベースとなるシステムの理想を語ると、最後にはどうしたってその方の趣味の話にしかならないんだが、だからこそ自分の趣味、自分が美しいとする社会の実現のためには、こうしたやり方で社会を維持するべきだと思うと、誰に対してでも胸を張って語ることのできるような知識と思考を積み重ねていたいよなあ。2022/02/21
ヒナコ
12
民主主義がどのように評価され、どのように民主主義を運用すべきかを議論した民主主義論の歴史的変遷の解説を中心に、政治学おより政治哲学における民主主義について書かれた新書。本書の概要は以下の通りである。→2022/07/06