出版社内容情報
事例やデータを踏まえ、科学的な視点から戦争と平和を捉えようとする本書は、現在の国際政治学の知見を示すものでもある。そこからは、日本の安全保障を考える際のヒントも見えてくる。
内容説明
「戦争の原因には何があるのか」「国際介入の効果とは」「民主主義と平和は関係があるのか」「戦争を予測することは可能か」…。本書は、国際政治学の最前線の成果を生かして科学的に国家間戦争や内戦を論じ、多くの疑問に答える。そして緊張を増す東アジアの現状を踏まえ、日本の安全保障などの展望も示す。歴史やイデオロギーから一定の距離を置き、データ分析から実証的に国際情勢と戦争の本質に迫る試み。
目次
序章 戦争と平和をどのように論じるべきか
第1章 科学的説明の作法
第2章 戦争の条件
第3章 平和の条件
第4章 内戦という難問
第5章 日本への示唆
第6章 国際政治学にできること
著者等紹介
多湖淳[タゴアツシ]
1976年静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学術院教授。1999年東京大学教養学部卒業。2004年東京大学大学院総合文化研究科(国際社会科学専攻)博士課程単位取得退学。2007年2月東京大学より博士号(学術)取得。神戸大学大学院法学研究科准教授などを経て現職。2017年からオスロ平和研究所(PRIO)グローバルフェロー。第16回(令和元年度)日本学術振興会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
117
戦争を科学するなど「人命が犠牲になるのに不謹慎」と思う向きもあろう。ロシアのウクライナ侵攻で連日多くの死傷者が報道されている現状では尚更だが、戦争や内戦の原因やコスト、日本の安全保障問題などを考える上で合理的なデータ収集と分析は不可欠だ。欧米の戦争研究の最新成果を学んだ国際政治学者が戦争発生のメカニズムを探り、憲法9条や反戦運動とも連動した「強くて安心感を与える日本」こそが、戦争に巻き込まれない国益だと説く。その結論は理性的で納得できるのだが、歴史やイデオロギー抜きで実現する方法が示せていないのは問題か。2022/04/09
佐島楓
72
戦争を引き起こすリスクなどをデータ化するという国際政治学の新たなアプローチ。国や国の背負った歴史・外交問題・宗教などをあえて考慮に入れず数値として示す意図がよく理解できなかった。国家というものは世界で唯一のものであり、標準化は難しいのではないだろうか。私が理解できなかっただけなのだろうけれど。2020/02/19
skunk_c
49
従来の「イズム」(主義、あるいはイデオロギーと言っても良いか)に依拠した国際政治学とは一線を画す、統計的手法とゲーム理論により、データと証拠に基づいた手法で戦争や平和といった国際政治を考える「科学的国際政治学」の入門書。最初はちょっととっつきにくい面もあったが、内容は平易で、主に2国間の問題や日本を題材にしてあるので、その思考方法も理解しやすい。データセットが公開され、多くの研究者の批判や追試を経て精緻化していくという研究手法は、理系では当たり前だろうが文系としては斬新かつ魅力的だ。示唆に富む指摘も多い。2020/02/21
逆丸カツハ
42
軍事よりで、定性的な記述を予想していたけれど、定量的に戦争と平和のいくつかの事例を示し、その方法論が記されていて、面食らった。しかし、非常に面白かった。実際に予測を的中させるのは難しいにしても、このようなデータを整理して蓄積させることは重要なことだと思う。2024/05/28
coolflat
20
44頁。ウェストファリア体制は、カトリックとプロテスタントの間の三十年戦争を契機として築かれた。この争いによる死者は突出している。大きな戦禍を生んだ事で、欧州の王や領主たちはどの宗教を自身の領域で公式なものとするのかを主権として決定する共通了解を確立し、他の領域に介入しない内政不干渉という原則を作り、その考え方は今の国際関係でも継承されている。59頁。予防戦争とは、将来、自分の力が弱くなると考える国が、今の時点で有利な状態で予防的に相手を負かすべく選択されるため、この名がついている。真珠湾攻撃が挙げられる2021/01/10