出版社内容情報
ロシア革命後、日本はシベリア中部まで侵攻し傀儡政権を作る。だがパルチザン、赤軍に敗退、虐殺にも遭遇し…。7年の戦争を描き切る。
内容説明
1917年11月に勃発したロシア革命。共産主義勢力の拡大に対して翌年8月、反革命軍救出を名目に、日本は極東ロシアへ派兵、シベリア中部のバイカル湖畔まで占領する。だがロシア人の傀儡政権は機能せず、パルチザンや赤軍に敗退を重ねる。日本人虐殺事件の代償を求め、北サハリンを占領するなど、単独で出兵を続行するが…。本書は、増派と撤兵に揺れる内政、酷寒の地での7年間にわたる戦争の全貌を描く。
目次
序章 ロシア革命勃発の余波―一九一七~一八年
第1章 日米共同出兵へ―一九一八年
第2章 広大なシベリアでの攻防―一九一九年
第3章 赤軍の攻勢、緩衝国家の樹立―一九一九~二〇年
第4章 北サハリン、間島への新たな派兵―一九二〇年
第5章 沿海州からの撤兵―一九二一~二二年
第6章 ソ連との国交樹立へ―一九二三~二五年
終章 なぜ出兵は七年も続いたのか
著者等紹介
麻田雅文[アサダマサフミ]
1980(昭和55)年東京都生まれ。2003年、学習院大学文学部史学科卒業。10年北海道大学大学院文学研究科博士課程単位取得後退学。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員、ジョージ・ワシントン大学客員研究員などを経て、岩手大学人文社会科学部准教授。専攻は近現代の日中露関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
69
例えば高校日本史の教科書でも、数行で片付けられてしまうことの多いテーマを、コンパクトにまとめた好著。チェコ軍団救出というアメリカとの共同出兵をスタートに、ドイツの極東進出、ロシア革命の波及防止、そして北満州などへの領土的欲望などが絡み合いながら事態は動いていく。革命に対抗するロシアの動き、パルチザンとの関わりなども詳述され、その思惑の交錯が興味深い。尼港事件と北サハリン進駐など、きちんとしたものを初めて読んだ。時代は大正、内政ではデモクラシーを担った政治家の名前が続出するが、外交では意外と強硬だったり。2016/10/28
樋口佳之
60
日中戦争では、シベリア出兵に参加した多くの将校たちが昇進して指揮をとっているが、その経験が生かされたようにも見えない/逆説的だが、シベリア出兵は、政府が軍部を従わせて撤兵に成功した、戦前最後の戦争/満洲事変をきっかけに、一九三〇年代には政府と軍部の地位は逆転して、歴代の内閣は軍部の意向に追従せざるをえなくなる。最終的に撤退を決断できるほどの指導者を欠いたことが、シベリア出兵と日中戦争の最大の違い/2021/12/17
kawa
45
多大な人命と財貨を費やしながら、得るものの少なかった故か、あまり語られることのないシベリア出兵の7年にも渡る概要がコンパクトに理解できる良書。シベリア抑留の悲劇を非難する日本人が、シベリア出兵での民衆の被害を知っているのかとロシア人から逆襲を受けた冒頭のエピソードが印象的。チェコ・スロバキア軍の救出を建前に、その実は自国の権益拡大、ソ連革命政権妨害を狙った「忘れられた戦争」に陽があてられる。曾祖父がシベリア・チタに出征していた縁で、探し当てた資料の読みにも本書がとても役に立った。2022/08/09
かごむし
37
不勉強なことに、1918年のウラジオストクへの出兵にはじまり、1925年の北サハリンからの撤退に終わる「シベリア出兵」という存在そのものを、初めて知った。国際情勢という制約の中で、日本はどのような政治を行い、軍事力の行使をし、何を目指したのか。後世に生きる僕たちは、太平洋戦争につながるあの時代、というものをどのように捉えることもできるだろう。しかし、当時を生きる人たちも、精一杯の努力をしたであろうことは客観的な記述の中だからこそ光って見える。評価の前に、正しい認識をしなくてはいけないということを痛感する。2016/11/02
ピオリーヌ
30
麻田雅文『日ソ戦争』が面白かったので読んでみた。平成28年の刊。ロシア革命の混乱に乗じ、大正七年にウラジオストクに日本はじめ各国の軍隊が上陸して始まり、ウラジオストクからは大正11年に撤兵する。だが当書では大正14年に北樺太から日本軍が撤退するまでの七年間をシベリア出兵と定義している。日本ではシベリア出兵は知名度が低いとされており(私も知らなかった)、日本がバイカル湖周辺まで攻め行ったと聞いて驚きを隠せない。また当時の首相の権限の弱さ、山県有朋を頂点とした「元老」が実質的な首相任命権を持った体制、2025/03/05