内容説明
ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)は、世界でもっとも知られた文学者だろう。『マクベス』や『ハムレット』などの名作は読み継がれ、世界各国で上演され続けている。本書は、彼が生きた動乱の時代を踏まえ、その人生や作風、そして作品の奥底に流れる思想を読み解く。「万の心を持つ」と称された彼の作品は、喜怒哀楽を通して人間を映し出す。そこからは今に通じる人生哲学も汲み取れるはずだ。
目次
第1章 失踪の末、詩人・劇作家として現れる
第2章 宮内大臣一座時代
第3章 国王一座時代と晩年
第4章 シェイクスピア・マジック
第5章 喜劇―道化的な矛盾の世界
第6章 悲劇―歩く影法師の世界
第7章 シェイクスピアの哲学―心の目で見る
著者等紹介
河合祥一郎[カワイショウイチロウ]
1960年、福井県生まれ。東京大学文学部英文科卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程・人文社会系研究科博士課程およびケンブリッジ大学修士・博士課程を経て、両大学より博士号(Ph.D)取得。東京大学大学院総合文化研究科准教授などを経て、現在は東京大学大学院総合文化研究科教授(表象文化論)。『ハムレットは太っていた!』(白水社、2001年、サントリー学芸賞受賞(芸術・文学部門))など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
37
観劇し本でも読んだものの今一つ楽しみ方がわからなくて、あらためて入門を、と手を出した。伝記を踏まえ、味わい方のポイント、喜劇と悲劇、そして作品が示すその哲学と、本当にわかりやすく頭に地図を作ってくれた。◇シェイクスピアは前近代のもの、その後の西洋近代演劇よりも狂言などに近い、という河合の言に膝を打つ。ガチガチじゃない、だからむしろ今の観客に開かれてる。◇思い返すとシェイクスピアの作品はあらすじ以外ほとんど知らなかったことに気づく。せっかく読み始めたんだ、続けて何冊か行ってみよう。そう勇気づけてくれる良書。2019/04/30
trazom
24
わかり易くて、大変勉強になる本である。シェイクスピアの生涯を概観するだけでなく、彼の作品についての見事な解説に、成程と何度も頷きながら一気に読み終える。彼の戯曲が当時の標準に比べてどれほど画期的であったかがわかる--時・筋・場所の三一致の法則に従ってない、頭で理解するのではなく感じるもの、リズムや音の響きを楽しむ世界であること。また、彼の喜劇は「無知の知」であり、己の愚を知る「賢い阿呆」の道化が大切であること、一方、悲劇の本質は、ヒューブリス(神に成り代わって運命を定めようという傲慢さ)だと教えられる。2016/08/30
ロビン
23
世界で最も有名な劇作家であろうウィリアム・シェイクスピア。昔全集を通読したことはあるのだが、その実人生についてはよく知らないので本書を読んでみた。前半部はシェイクスピアの生涯、後半部は作品や時代背景の解説になっている。作品を読んでいると、庶民的で人間学に通じており、世間的な意味でもしっかりしていそうだと思っていたが、故郷で不動産運営や穀物転売などをしてきっちり資産を作ったりしていたようだ。「心の目で真実を見る」ことの大切さや、近代の「新劇」との違い、ストア派哲学という角度からの分析などとても勉強になった。2021/12/17
かふ
21
録画していたNHKBS「いまこそ、シェイクスピア」を観た。その解説が河合祥一郎先生だった。シェイクスピアの時代も疫病時代(パンデミック)で当時はペストの時代。ロンドンなんかは酷かったらしい。『ロミオとジュリエット』で伝言の修道士がロミオに伝えられなかったのは疫病で隔離されてしまうため足止めを食らってロミオに伝言できなかった(オリビア・ハッセーの映画では単にすれ違いだった)。シェイクスピア・マジックと言って時間の過ぎ方がクロノス的な時間ではなくカイロス的な時間の展開。2021/05/29
ぱなま(さなぎ)
17
1〜3章はウィリアム・シェイクスピアの人生を辿る。それそのものが劇の題材になりそうなくらい面白いエピソードに満ちている、と思うのは、後半4〜7章で明らかにされるように、シェイクスピア自身の思想である「主観的」想像力に基づいて著者が記述しているためだろうか。 後半の解説は、彼の作品の書かれた時代の思想が作中の台詞や人物の言動にまで反映されていることがよくわかる。シェイクスピアのストーリーの面白さは普遍的なものだが、登場人物の行動に対して現代の私が理解し何かを感じ取るためには、→2022/11/26