内容説明
21世紀以降、保守主義者を自称する人が増えている。フランス革命による急激な進歩主義への違和感から、エドマンド・バークに端を発した保守主義は、今では新自由主義、伝統主義、復古主義など多くのイズムを包み、都合よく使われている感がある。本書は、18世紀から現代日本に至るまでの軌跡を辿り、思想的・歴史的に保守主義を明らかにする。さらには、驕りや迷走が見られる今、再定義を行い、そのあり方を問い直す。
目次
序章 変質する保守主義―進歩主義の衰退のなかで
第1章 フランス革命と闘う
第2章 社会主義と闘う
第3章 「大きな政府」と闘う
第4章 日本の保守主義
終章 二一世紀の保守主義
著者等紹介
宇野重規[ウノシゲキ]
1967(昭和42)年東京都生まれ。91年東京大学法学部卒。96年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。99年東京大学社会科学研究所助教授を経て、2011年より同教授。専攻は政治思想史、政治学史。著書『政治哲学へ―現代フランスとの対話』(東京大学出版会、2004年/渋沢・クローデル賞LVJ特別賞)『トクヴィル平等と不平等の理論家』(講談社選書メチエ、2007年/サントリー学芸賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
145
バークが、《過去に範を求めず未来へ跳躍》しようとしたフランス革命を自己蔑視と呼び、宗教を含めた《偏見や習慣》に理性を補う働きを見出した…という辺りに保守主義の原点を見ている。一方、新大陸に渡った人々の家族的信念と宗教心からなるアメリカの「伝統主義」が顕在化した20世紀後半には、大きな政府への不信から、市場化を求めるリバタリアニズムが起こる。さらに反共のユダヤ系知識人を中核とし、積極的な対外政策を求めるネオコンが参入することによって、新しい保守主義が形成されていった、と。この言葉の複雑さはいかにも現代的だ。2019/11/07
KAZOO
141
これだけの新書で保守主義を概観するのは難しいと思われます。反フランス革命というところから書き起こしていて、日本の保守主義の福田恆存や丸山眞男を引き合いに出して論じておられます。アメリカのリバタリアニズムを論じているのは面白いと思いました私も昔から少しかじったことがあるので。ハイエクもいいのですが、ヒトラーに影響を与えたカール・シュミットについても触れてほしい気がしました。2016/12/02
1959のコールマン
80
☆5。一言でいえば名著。タイトル通り。人から「保守主義とは何か」と訊かれたら黙ってこの本を出す。バランスもとれていてちょうど良い。一番面白かったのは保守主義の父とされているエドマンド・バーグの項目。国王との衝突を避けなかったり、アメリカ独立を容認したり、東インド会社の不正を糾弾したりと、意外に行動的なのには驚いた。他にはT・S・エリオット、G・K・チェスタトン、フリードリヒ・ハイエク(本人は「自分は保守主義者じゃなく自由主義者だ」といってるけど)、マイケル・オークショットあたりが興味深かった。2020/10/21
かわうそ
80
★★★★★傑作。近代保守思想の父エドマンドバーグは『リベラル保守宣言』で取り上げられており知っていたが、改めて現代のいわゆる保守論壇と言われる人たちは実は保守ではないという結論に至った。保守とはいわば相対的にしか存在しない。あくまでも理想主義という急進的な思想に反対するときに既存の伝統を保守するために現れるのである。保守主義は国民の自由が担保されているのが前提である。よって戦争と革命は保守にとって最も忌避しなければいけないものである。なぜなら戦争と革命は伝統を破壊し、自由を奪う最悪な事態であるからだ。2016/09/20
Tomoichi
62
最近読んだ本の中でベスト。知っているようでわかっていなかった保守主義。フランス革命・社会主義・大きな政府と闘う保守主義を考察する中で本流を探る。「日本の保守主義」はこの内容でより深い考察を一冊の本を出して欲しいと思いました。オススメです。2018/01/17