内容説明
ナチスが権力を掌握するにあたっては、ヒトラーの演説力が大きな役割を果たした。ヒトラーの演説といえば、声を張り上げ、大きな身振りで聴衆を煽り立てるイメージが強いが、実際はどうだったのか。聴衆は演説にいつも熱狂したのか。本書では、ヒトラーの政界登場からドイツ敗戦までの二五年間、一五〇万語に及ぶ演説データを分析。レトリックや表現などの面から煽動政治家の実像を明らかにする。
目次
序章 遅れた国家統一
第1章 ビアホールに響く演説―一九一九~二四
第2章 待機する演説―一九二五~二八
第3章 集票する演説―一九二八~三二
第4章 国民を管理する演説―一九三三~三四
第5章 外交する演説―一九三五~三九
第6章 聴衆を失った演説―一九三九~四五
著者等紹介
高田博行[タカダヒロユキ]
1955年(昭和30年)、京都市に生まれる。大阪外国語大学大学院修士課程修了、Dr.phil.(文学博士)。フンボルト財団招聘研究員、大阪外国語大学教授、関西大学教授などを経て、学習院大学文学部教授。第28回ドイツ語ドイツ文学振興会奨励賞受賞(1988年)、第9回日本独文学会賞受賞(2011年)。Germanistik(deGruyter)国際編集顧問。専門は近現代のドイツ語史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
285
ヒトラーが演説で如何に巧みに政権を掌握したのかが、書かれておりそれはいつでもどの国でもどの時代でも条件が揃えば権力が好きに情報を操れるものなのだと思い知った。意外にも政権を取ってからのヒトラーは演説をほとんどせずに国民からの支持も急速に離れていってたのは初耳だった。2015/03/16
マエダ
93
ヒトラーの演説は本当にドイツの国民の士気を高揚させるものだったのであろうかという疑問が本書の一番の見所となっていて、言語面と演説面にスポットを当て時間軸に沿って分析することによってヒトラーの演説に迫っている。身振り手振りで口舌弁を振るうイメージであったが、様々な種類の演説に驚きもある。2016/02/25
HANA
74
ヒトラーといえば演説の時の声と動きが思い出させられる。ナチズムは様々な方面から研究されているが、本書はあの極めて特徴的な演説に視点を当てた一冊。時代によって変化する内容は当然ながら、構成や言葉遣い、レトリックに至るまで詳しく解説されている。面白いのはヒトラーの演説が政権を取るまでは人を惹きつけていたにも関わらず、政権獲得後視聴を強制した事によりその魅力を失ったという点とオペラ歌手のエピソード。前期、一介の演説だけで人々を熱狂させ破滅にまで追い込む様がまざまざと見られ、言葉の持つ恐ろしさを再確認しました。2022/03/09
崩紫サロメ
63
ヒトラーの演説を主に言語やジェスチャーの面に注目し、150万語にも登るデータからどのような時期にどのような表現が多く用いられたかを分析する。ヒトラー演説の本質について秀逸な分析はその衰退期。ソ連侵攻後、ヒトラーの演説が「響かなくなる」時期である。「演説の構成と表現法に受け手の心を動かす潜在力がいくらあっても、またその演説の声とジェスチャーを多くの受け手に伝播させるメディアがあっても、受け手側に聞きたいという強い気持ちがなければ、その潜在力は顕在化しえず、受け手を熱くできなかった」(lo.3209) 2020/10/02
樋口佳之
50
邦訳された我が闘争は上巻でギブアップの内容なんだけど、天性の才があるにせよヒトラーも研鑽と研究を積んでいたのね。/政治家が抽象的な文言を使い出したら疑いをもって臨むべきなのだけど、具体例な話に終始する演説は聞いていて結構辛いところもあって悩ましい。/翻って日常的な日本語もまともに語れない人々が政権を維持し続けているなんてのはどうなんだかと嘆息。2020/03/10
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