内容説明
一八五四年、来航したペリー提督は蒸気車模型を幕府に献上。以来、日本は鉄道時代に突入した。幕末の外国人たちによる敷設計画に始まり、新橋~横浜間の開業、官設鉄道を凌ぐ私設鉄道の全盛期を経て、一九〇六年の鉄道国有化と開業距離五〇〇〇マイル達成に至る半世紀―。全国的な鉄道網はいかに構想され、形成されたのか。鉄道の父・井上勝をはじめ、渋沢栄一、伊藤博文などの活躍とともに日本鉄道史の草創期を描く。
目次
第1章 鉄道時代の到来―ペリー来航から廟議決定へ
第2章 「汽笛一声」からの道のり―鉄道技術の自立
第3章 東海道線の全通―東と西をつなぐ幹線鉄道
第4章 私設鉄道の時代―鉄道熱と鉄道敷設法
第5章 鉄道開通がもたらしたもの―生活と社会の変容
第6章 国有鉄道の誕生―帝国鉄道網の形成へ
著者等紹介
老川慶喜[オイカワヨシノブ]
1950年埼玉県生まれ。立教大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。関東学園大学助教授、帝京大学助教授などを経て、93年より立教大学経済学部教授。2013年より立教大学経済研究所所長。1983年、鉄道史学会設立に参加。2003年から06年まで鉄道史学会会長を務める。著書『近代日本の鉄道構想』(日本経済評論社、2008、第34回交通図書賞)、『日本の鉄道―成立と展開』(共編著、日本経済評論社、1986、第13回交通図書賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
55
三部作の第1巻。ペリーの黒船の鉄道模型から説き起こし、佐賀藩の鉄道模型作成(レプリカを見た)、海外の鉄道体験、そして日本の鉄道建設(新橋=横浜間の鉄道建設を指揮したモレルが完成前に結核で客死していたのは知らなかった)の黎明期を史料吟味に基づいて丁寧に解説する。著者の視点で重要なのは、よく言われるこの時代の鉄道計画に対する軍の影響力を、それほどでもなかったと批判ししているところ。また水運との競争、地域経済への影響などにも目配せがあり、明治の殖産興業の重要な具体例として、やはり押さえておくべき内容だと思った。2021/04/10
壱萬参仟縁
19
『別段風雪書』1846年でフランス日刊紙が紹介された(3頁)。薩摩藩では『遠西奇器述』1854年で、写真機、蒸気関係の解説(10頁)。福沢諭吉が見た鉄路商社(14頁~)。(株)組織を採用した鉄道会社のこと。建築師長モレルが来日、東京~横浜間鉄道敷設の指導(48頁~)。日本人のみによる大津線(70頁~)。琵琶湖1889年当時の路線図は、湖東は東海道線あるが、湖西は航路のみである(75頁)。ボイル「中山道調査上告書」(88頁~)。2014/09/21
浅香山三郎
11
鉄道史はだいたいわかるつもりで読み始めたが、知らないことが多く、興味深かつた。中仙道ルートが東海道ルートよりも先に建設され始めたこと、鉄道国有化反対論、伊藤勝といふ人物の業績など、真面目な通史スタイルゆへに、後々も参照したい本だと感じた。2017/05/30
人間
10
幕末期〜明治にかけて鉄道敷設計画が始まり、当初は米・英・仏などの外国勢が実権を握ろうとあの手この手で提案してくるが、そのうち自国の資本と権限で何とか敷設に着手。とは言えはじめはエドモンド・モレル等大勢の外国人技術者の力を借りねばならなかった。今に至るまで影響があるのはゲージの規格。この時代に日本勢の知識不足により狭軌道に決まったが、鉄道全般に大きな役割を果たした井上勝、大隈重信も多いに後悔している。鉄道は物資の輸送、人の流れ、経済を大きく変えた。資本家もこぞって出資して私鉄が始まった。2021/05/20
jiangkou
10
欧州に遅れて40年で急速に日本中を縦断した鉄道創世記の記録。最初は軍事利用されるからダメという反対論が多かったが鉄道長官の意思によって官営鉄道が開業。その後は海運を補足する形で鉄路を債権立てて敷設、その後京阪、東京を結ぶべしという話が出た。当時はまだ外国人技師の意見が強く中山道経路論が主流だったが日本人技師の測量により東海道へ変更。その後経済効果が表れだし私鉄の乱立、東北のような農産物提供地と都会の消費地との格差がでるなど現在にもみられる構造ができてきた。その後日露後まで分かりやすく纏められている。良著。2019/09/07
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