内容説明
街を歩けば、アスファルトの割れ目、電柱の根元、ブロック塀の穴、石垣など、あちこちのスキマから芽生え、花開いている植物が見つかる。一見、窮屈で居心地の悪い場所に思えるが、こうしたスキマはじつは植物たちの「楽園」なのだ。タンポポやスミレなど春の花から、クロマツやナンテンなど冬の木まで、都会のスキマで見つけられる代表的な植物110種をカラーで紹介。季節の植物図鑑として、通勤通学や散策のお供に。
目次
春(タネツケバナ;キュウリグサ ほか)
初夏(ヒメジョオン;ツタバウンラン ほか)
夏(アメリカヤマゴボウ;カタバミ ほか)
秋(ヒガンバナ;ススキ ほか)
冬(ナンテン;ツルソバ ほか)
著者等紹介
塚谷裕一[ツカヤヒロカズ]
1964年鎌倉市生まれ。1988年、東京大学理学部卒。93年同大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。岡崎国立共同研究機構・基礎生物学研究所・統合バイオサイエンスセンター助教授を経て、東京大学大学院教授。専門は植物学で、葉の発生を司る遺伝子経路の解明を主たるテーマとしつつ、東南アジア熱帯雨林でのフィールド活動など、さまざまな角度から植物の“生”を研究している。日本学術振興会賞、松下幸之助花の万博記念奨励賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
124
アスファルトの割れ目や電柱の根元、ブロック塀に開いた穴……街中にある『スキマ』から懸命に茎を伸ばす植物たち。「こんなところに……」と健気な姿にほろりとし、旺盛な生命力に感心する。しかし視点を変えれば、スキマは生存競争を避けられる『楽園』だとも言える。生きるために多くを求めず、必要な要素が3つあれば良い。アスファルトに固められた地下は水分の蒸発を抑えてくれる。二酸化炭素は現代では増え過ぎて困るほどだし、あとは太陽の光があれば生きるための糧は得られるのだ。そう考えると植物の姿に『人生の達人』の風格さえ感じる。2016/05/08
まーくん
102
お供のワン公もいないのだが、毎朝散歩を欠かさない。昨秋、少々入院し人生観が変わった(笑)。それまでの運動志向を止め、路傍の草花を愛で、ゆったりと歩くことにした。顔馴染みの方や連れのワンコと挨拶を交わし、美しい花や珍しい花を見つけたらスマホでパチリ。そのうち気が付いた。私のスマホにグーグル・レンズというソフトが勝手にインストールされている。これは思いのほか優れもので、写真をレンズにかけるとグーグル様が花の名を答えてくれる。正解率は8割くらいかな。そこで路傍の草花を種々紹介する本書も併せて。これで鬼に金棒!2022/08/02
アナーキー靴下
86
いとうせいこうと柳生真吾さんの植物見ながら散歩本『プランツ・ウォーク』みたいのに物凄く共感と親近感が湧きつつ、実際に自分が散歩すると知識不足で楽しみきれないことが多い。この本はアスファルトの割れ目とかの、スキマに生える植物を狙い撃ちしているので、雑草的なものから園芸植物が土着化したものまで、身近な植物ばかりで参考になる。概ね見開き1植物説明、写真も解説もとても良い。木の根元に芽生えた若木を見つけるのは好きだけど、この本を見ていなかったらキリの若木なんて絶対見逃していたと思う。涼しくなったら散歩に行きたい。2022/07/05
あじ
61
スキマの植物というと雑草を連想しますが、ここで紹介されているのはそれに限らず園芸種も含めた広域なものです。瓦屋根の上や捨てられたトラックのスキマに根付いた事を、彼らは幸運に思っているそうです。各地で見掛けたスキマ君たちの写真に、解説を加えた図鑑。ハルジオンとヒメジョオンの見分け方は、葦(あし)と葦(よし)と同じだという事も学びました。散歩の楽しみ方に幅が広がりそう。ノビルやオオイヌノフグリを見て『雑草という名の草はない 全ての草に名前がある』昭和天皇のお言葉を、反芻せずにはいられませんでした。2015/11/23
翔亀
58
スキマ植物というと植物の奇人変人と思いきや、現代都市においては一度その場所を(偶然でもいい)奪ってしまえば、コンクリートの裂け目やブロックの割れ目は、太陽を独り占めできるので植物にとって最も条件がいい場所なのだ。スキマ植物は都市の勝者といってよい。そして過酷な環境で生き残った高山植物が美しいのと同様に、スキマ植物は美しい花を咲かせる。だからこれは都市の<高山植物図鑑>といわずして何だろう。しかも注意して街を歩けば本書の美しい花たちを大抵の場合、見つけることができることに驚くのだ。↓2016/09/11