出版社内容情報
言霊とはどのような霊力なのか。古事記、日本書紀などの古典を丹念に渉猟し、具体的な事例を挙げて古代日本人の信仰を明らかにする。
内容説明
古代日本人は、ことばには不思議な霊威が宿ると信じ、それを「言霊」と呼んだ。この素朴な信仰の実像を求めて、『古事記』『日本書紀』『風土記』の神話や伝説、『万葉集』の歌など文献を丹念に渉猟。「言霊」が、どのような状況でいかなる威力を発揮するものだったのか、実例を挙げて具体的に検証していく。近世の国学者による理念的な言霊観が生み出した従来のイメージを覆し、古代日本人の信仰を描き出す。
目次
序章 『万葉集』の「言霊」―言と霊と神と
第1章 呪文の威力―神と人と
第2章 国見・国讃め―支配者の資格
第3章 国産み・死の起源―生と死の導入
第4章 発言のし直し―状況の転換
第5章 タブーと恥―一方的な発言
第6章 偽りの夢合わせ―妻の発言
第7章 名前へのこだわり―実体との対応
終章 古代日本人の言霊―神のことばがもつ霊力
著者等紹介
佐佐木隆[ササキタカシ]
1950年(昭和25年)、青森県に生まれる。東洋大学文学部専任講師・助教授を経て、学習院大学文学部教授。専攻は日本語史・古代文献学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はちめ
10
三読。挙げられている古典資料の言霊が言葉自体の威力ではなく神の威力を通じたものであるというのはその通りであろうが、古代の日本列島の住人が言葉を獲得したのと神を獲得したのとではどちらが先だろうか。 自然環境にほぼ支配されていた原日本人は、雷や火山などの自然の脅威に恐れを抱き、それを表現するために言葉を発明することになったのかもしれない。 ところで、初読時の言葉と文字の関係に関する感想はなかなか面白い。言霊が賑わいすぎて文字の導入が憚られたというのはありそうな話だ。☆☆☆☆2020/03/14
またの名
8
「天皇は塩を食せなくなれ」「天皇だけはこの水を飲めなくなれ」と日本書紀等で言葉の力により呪われ過ぎて、心配したくなる。スピ系のいわゆる言霊ネタとは違う堅実な検証をする本なので捉え方が広く、それも言霊?と思わされる言い間違いや夢解きまで記述。スサノオに対するアマテラスの有名な詔り直し=大暴れして御殿に糞を撒き散らしたけど本当は悪事じゃないはずと忖度する言い換えが、やっぱり最も古いし言霊っぽい。しかし著者のスタンスは近代に入ってからの遡及的な創作という側面を強調し、副題のニュアンスを最後にひねるアクロバット。2021/02/06
読書実践家
7
言葉の威力について日本人がどのように考えてきたか。神への祈願、物の名前と実態への対応。アニミズム。日本人の神秘的な部分ついて迫っていける一冊。2016/03/28
カツ
5
ちょっと期待した内容とは違っていた。古代文献を読み解くと、言霊とは言葉に霊力があるのではなく神がその霊力を発揮する事のようだ。なので現代の言霊信仰とは意味合いが違っている。2020/07/29
カゲツナ
5
とても興味深い話を読めてよかったです。 人間が発した言葉を聞き入れた神がその霊力を発揮して現実に影響を与えるということらしい。 勉強になりましたね。2015/05/08
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