内容説明
一人当たりのGDPで日本を抜きアジアで最も豊かな国とされるシンガポール。一九六五年にマレーシアから分離独立した華人中心の都市国家は、英語教育エリートによる一党支配の下、国際加工基地・金融センターとして発展した。それは表現・言論の自由を抑圧し、徹底的な能力別教育を行うなど、経済至上主義を貫いた“成果”でもあった。本書は、英国植民地時代から、日本占領、そして独立し現在に至る二〇〇年の軌跡を描く。
目次
序章 シンガポールの曙―一九世紀初頭
第1章 イギリス植民地時代―一八一九~一九四一年
第2章 日本による占領時代―一九四二~四五年
第3章 自立国家の模索―一九四五~六五年
第4章 リークアンユー時代―一九六五~九〇年
第5章 ゴーチョクトン時代―一九九一~二〇〇四年
第6章 リーシェンロン時代―二〇〇四年~
終章 シンガポールとは何か
著者等紹介
岩崎育夫[イワサキイクオ]
1949(昭和24)年長野県生まれ。立教大学文学部卒業。アジア経済研究所地域研究第1部主任調査研究員などを経て、拓殖大学国際学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mitei
337
シンガポールの歴史がざっくりとよくわかった。国家なのにまるでリー・クアンユーが会社を興して運営しているような感覚になった。経済的には日本よりすごいな。逆に日本が普通の国になってるのかな。マラッカ海峡の境目だから歴史的にも重要な場所で立地的にいいことも分かる。2017/04/30
skunk_c
72
東南アジア関連の積ん読本消化。シンガポールは自分が大学1年の時初めて行った外国で、当時は長髪禁止、ポイ捨て罰金5,000円という厳しさがある反面、治安がとても良かったことを覚えている。本書を読むと、ラッフルズが殆ど人の住んでいない島に拠点を築いてそこに周辺アジア(特に中国)から人が流入、やがて都市国家になっていった様子がよく分かる。著者も書いているように、リー・クワンユーが創設した企業と言ってもいいくらいに、経済発展至上の国家運営で、人々の多数がそれを支持してできた「人造国家」の様相を呈している。2022/05/06
AICHAN
49
図書館本。シンガポールは小さな島国で資源がなく核武装していない点で日本に似ている。そのシンガポールの生きてきた道、これから生きる道は日本の範となるのではないかと思ってこの本を借りたが、「これだ」というものはなかった。シンガポールは寄港地、中継貿易基地としての機能により発展した。イギリス、日本に植民地にされ、日本統治下では5千人~5万人もの中国系が虐殺された。その後、マレーシアと合併独立するもののすぐ分離してシンガポール国家として今に至る。実に詳細で丁寧なシンガポール史。よく調べたと感心した。2018/07/19
T2y@
44
シンガポールの歴史≒リー・クアンユーの時代史。 アジアトップの経済大国を支え育てた、エリートによる、管理・開発主義システム。 一方で、野党の徹底的抑圧など、さながら、ジョージオーウェル『1984』をも彷彿させる。苛烈さ。 “自由は隷従なり。 無知は力なり。” 管理された豊かさからの脱却にシフトしつつある、シンガポール。 それが正しいのか? 他国の事はとかく冷ややかに見てしまうのだが、しかし。2015/09/05
Willie the Wildcat
37
資源や土地はもとより、人財も”0”からの開発!移民国家故の強み。国家戦略の下、徹底したSelection and Concentration。国家が企業、企業が国家!一方、過渡の競争と格差社会。意図的なこれら政策への”次の一手”に興味。住んでいて気になるのが、自然開発。ウビン島だけは残して欲しいなぁ。最もお気に入りのスポット!蛇足だが、”死の島セントーサ”。知らなかった・・・。2013/07/24