内容説明
私たちは、ことばを「文字どおり」に使っているわけではない。話していないのに伝わることもあれば、丁寧に説明していても誤解されることがあるのはなぜか。社会心理学の視点から、敬意表現や皮肉など、対人関係のことばの謎に迫る。
目次
第1章 「文字どおり」には伝わらない
第2章 しゃべっていないのになぜ伝わるのか
第3章 相手に気を配る
第4章 自分に気を配る
第5章 対人関係の裏側―攻撃、皮肉
第6章 伝えたいことは伝わるのか
終章 伝えたいことを伝えるには?
著者等紹介
岡本真一郎[オカモトシンイチロウ]
1952年、岐阜県生まれ。1982年、京都大学大学院文学研究科博士後期課程(心理学専攻)満期退学。愛知学院大学文学部講師、助教授、教授を経て、同大学心身科学部心理学科教授。1994年ブリストル大学客員研究員。博士(文学)。専攻・社会心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
31
わかりやすく、しっかりと「伝えること」と「伝わること」の間のズレを解き明かしていってくれる。中でも、相手は嘘を見破っていると思いがちであるという「透明性バイアス」の実験はとても納得。◇相手への配慮とともに、同じくらいのボリュームで「自分への配慮」を配してあるのもとても面白い。自己開示の話題が中心だが、対自分のコミュニケーションは大切だし、そうなると多元的な自己論へもつながってゆく。◇コミュニケーションのダークサイドである「攻撃」も解説したうえで「で、どうすりゃ伝わるのか」へと向かう。本当に堅実な本だなあ。2016/11/04
かるかん
30
言語の使われ方、変化がよくわかる本だった。 ネットでは自己開示や自己呈示が行われやすいということが特に印象に残っており、近年の炎上とかは、こういったことが原因で引き起こされるのだろうな、と思った。というのも、現実での知り合いとネットを通して交わる過程で、勝手に閉じた輪であると勘違いしてしまい、個人的なことを自己開示、自己提示してしまう。ネット上だとその程度が上がってしまい、行き過ぎた行為、考えまでをも記載してしまうからだ。そして第三者がそれを発見し・・・・・・。 酒と同じく節度を持ったお付き合いを。2014/12/25
Saiid al-Halawi
15
日常生活でよく使うことばのやり取りについて、皆がなんとなぁく感じてる経験則をアカデミックな用語を交えて分かりやすく説明&補強してく本。言語学的には例えば容認可能性の面から敬語の運用のされ方とか皮肉の効用とかについてスッとする説明がされてる感じで良かったけど、表題通り主眼は心理学とかそっち寄りだと思う。2013/05/02
tolucky1962
14
送りの歪,受けの誤認で,共通基盤の配慮不足,聞き間違い,語意の取違いなどの誤解が起きる。伝えるには共通基盤の意識,話題を明確化,フィードバック,単語選択が,気配りには丁寧さとなわばりの意識が重要。怒り制御には怒りを自然と認め,小出し,己の怒りを引き受け,選択肢を知り,すぐ反撃しないこと。人の心理は言語として発信受信され,社会が構成される。まとめると本書のタイトルになり,人間関係のなかで重要なことと思われる。細かく分析してハウツーに落とし込まれている本書の内容は整理して頭にいれておきたい。2021/04/04
hit4papa
11
ことばに関して社会心理学的な観点からの研究を著したものです。自分の「伝えたいこと」が「伝わらない」シーンにおいて、「伝わる」というメカニズムを詳説しています。納得の一冊とはいきません。自分自身でかたちづくった経験的なコミニュケーション論は、ある程度の年齢になれば持っているはず。そこに論理的な意味づけをするために本書を活用するのが良いと思います。