内容説明
近代日本の始まりは、ペリー来航ではなく、かつては天保の改革とされていた。高度成長期の公害問題が起こるまで、田中正造は忘れられた存在だった―。歴史は、新史料発見・新解釈により常に書き替えられる。特に近現代史は、時々の政治・社会状況の影響を受けてきた。本書は、マルクス主義の影響下にあった社会経済史をはじめ、民衆史、社会史という三つの流れから、近現代の歴史がどのように描かれ、修正されてきたかを辿る。
目次
序章 近現代日本史の三つのパラダイム
第1章 明治維新1―開国
第2章 明治維新2―倒幕
第3章 明治維新3―維新政権
第4章 自由民権運動の時代―変わる評価の主体
第5章 大日本帝国論―国家と天皇制の解明
第6章 日清・日露戦争の時代―一八九四~一九一〇年
第7章 大正デモクラシー期―一九一〇年代~二〇年代
第8章 アジア・太平洋戦争の時代―一九三一~四五年
第9章 戦後社会論―同時代史の解明
著者等紹介
成田龍一[ナリタリュウイチ]
1951(昭和26)年大阪市生まれ。83年早稲田大学大学院文学研究科日本史専攻博士課程修了。文学博士(史学)。86年東京外国語大学外国語学部助教授。90年日本女子大学助教授。96年より日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授(専攻・歴史学、近現代日本史)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
33
私たちはなぜ歴史に向き合うのか。なぜ歴史を語るのか。事実は変わらない。しかしその事実から読み解くのは今を生きる私たちの役割である。様々な歴史学者の論考を示しながら、戦後歴史学が近現代史をどのように読み込んできたのか、多くのことを学べた。2019/12/23
樋口佳之
26
本書の原型は、歴史の教員を目指す学生たちへの講義にあります。歴史の教員となったときに、史学史を踏まえた歴史教育を行ってほしいという思いからの講義/こういう素養持たれた先生に教わったらなあという思いもあり、現実には授業で活かせる余地あるのという疑問もあり。/2019/01/24
佐島楓
15
サブタイトルに印象付けられるほどの批判的な内容ではないように思う(あくまで事実列挙)。内容は易しくはないため、歴史好きの高校生~研究対象にしている大学生以上向きといったところか。研究上の観点をどこに置くかで解釈が変わってくるということを知るにはいいが、本の性格上参考文献を引用する形が多くなってしまっているところがちょっと不満といえば不満。2012/04/11
Michael S.
13
戦後歴史学へのマルクス主義の影響を知りたく思っていたところ,SNSで紹介してもらった本.この本は高校教科書の記述の根拠となっている重要な文献を中心に戦後歴史学の変遷を三つの時期に分けて述べている.その第一期はマルクス主義(史的唯物論)の影響を受けて「構造の解明」に力点を置いた歴史記述が主流であったこと,その後第二期,第三期は前時代を批判的に継承しつつ重層的に積み重なる. 歴史家自身が「時代の子」であり自身の体験やリアルタイムの政治・社会状況などに影響を受けているとのことが変化の動因と思われる.(続) 2021/05/02
ロッキーのパパ
10
歴史は歴史家や研究者などの解釈によって語られる。普段はその語られる「こと」を読むことが多い。本書は語る側の研究者に着目している点が目新しい。ただ、扱っている時代が幅広いため、登場する研究者が多く一人ひとりの解釈については消化不良に終わってしまった。正統な歴史研究を目指すことに向いているけど、ファンとして歴史を楽しむにはちょっと難しい内容かなと感じた。2012/03/24