内容説明
新時代の風を一身に浴び、民主的な立憲君主になろうとした昭和天皇。しかし、時代はそれを許さなかった―。本書は今まであまりふれられることのなかった青年期に至るまでの教育課程に注目し、政治的にどのような思想信念をもっていたかを実証的に探る。そしてそれは実際の天皇としての振る舞いや政治的判断にいかなる影響を与えたか、戦争責任についてどう考えていたか、さらに近代国家の君主のあり方をも考察する。
目次
第1章 思想形成(東宮御学問所;訪欧旅行;摂政就任)
第2章 天皇となる(田中内閣への不信;首相叱責事件;ロンドン海軍軍縮条約問題)
第3章 理想の挫折(満洲事変;五・一五事件;天皇機関説事件と二・二六事件)
第4章 苦悩の「聖断」(日中戦争;防共協定強化問題;太平洋戦争開戦;終戦の「聖断」)
第5章 戦後(退位問題;講和問題と内奏;「拝聴録」への道)
著者等紹介
古川隆久[フルカワタカヒサ]
1962(昭和37)年、東京都生まれ。86年東京大学文学部国史専修課程卒業、92年同大学院人文科学研究科博士課程修了、博士(文学)。広島大学総合科学部(専任)講師、横浜市立大学国際文化学部(のち国際総合科学部)講師、助教授などを経て、2007年より日本大学文理学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mitei
48
昭和天皇の生涯をまとめたもの特に戦前、戦中の話が多く取り上げられており戦争責任を追及する内容になっていたが、最後の昭和天皇の写真を見ると何か感動するものがあった。いつの時代も臣民の側が天皇の大御心にちゃんと拝察する必要があるのではと思った。2012/02/04
tamami
46
後半は粗筋を流し読み。できるだけ一次資料に近いものを取り上げ、著者の解説を挟みながら、実証的に昭和天皇の生涯に迫る。やや煩瑣な史料の羅列の中から、青年期までの思想形成、志とは逆に戦争推進の立場に立たざるを得なかった壮年期、戦争についての責任が陰を落とす老年期が浮かび上がってくる。天皇の政治的生涯については強い光が当てられているが、もっと人間としての側面にも言及して欲しかった。神御一人と言われた戦前の天皇に対しても、実に様々な政治勢力やマスコミが、自己の勢力増進のために権謀術策を重ねていることに驚かされる。2022/04/17
林 一歩
30
著者は昭和天皇擁護派の方なんだろうけど、資料に基づいた客観的な書きぶりに好感がもてた。他にいろいろ読んでから再読したいと思います。久しぶりに良い皇族関連本に巡りあいました。2013/09/30
金吾
26
◎一次資料を丹念にあさり昭和天皇の人物や考え方を浮き彫りにしようとした良書です。評価も一辺倒ではなく、木戸内大臣のような近臣からの天皇への批判にも触れている等興味深い内容でした。軍部特に陸軍の天皇軽視が色濃く表れていたのが印象的です。2024/10/23
浅香山三郎
18
昭和天皇に関する史料への参照状況がよくなつてきたこともあつて、本書のやうにかなり充実した評伝が書かれるやうになつた。とくに、幼少期からの教育や外遊経験がもとになつて、昭和天皇が思つた以上に立憲主義的な原理原則にうるさかつたやうだといふ指摘は興味深い。大日本帝国憲法のうへに明治以来の不文律であつた運用や諸装置(元老や宮中など)のバランスによつて成り立つてゐた国家が、やがてその均衡を崩し、戦争に突入していく。戦前の国家体制の矛盾や限界を知る上で、昭和天皇という個性をどう捉へるかといふ論点は依然興味深い。2021/03/14
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